現在、RPGはゲームのなかでも1、2を争う人気ジャンルといっても過言ではないですが、ゲーム黎明期はパソコンゲームを通じてじわじわとRPGが台頭してきた頃でした。そんな時代に、パソコンゲームを代表するソフトがファミコンでも発売されるとなれば、大きな期待をされるのも当然といえるでしょう。37年前の1986年3月17日に東芝EMIから発売された『ハイドライド・スペシャル』もその一本です。
■パソコン版よりもマイルドな謎解き! のはず、でも難しくない?
『ハイドライド・スペシャル』は、パソコン版で大ヒットした『ハイドライド』(T&Eソフト、1984年12月発売)のファミコン移植版。続編の『ハイドライドII』で採用された魔法や、サウンドといった要素が追加され、まさに「スペシャル」の名にふさわしいタイトルです。パソコンで難解といわれた謎解きもだいぶ優しくなったという話でしたが、私自身がせっかちなこともあってか、長時間じっくり遊んで謎を解くという感覚がイマイチ理解できませんでした。
ナイコン族だった私でも、パソコンのある友人の家で遊んだ『惑星メフィウス』や『サラダの国のトマト姫』、『フラッピー』、『妖怪探偵ちまちま』は確かに難しかった覚えがあります。しかし、みんなで試行錯誤しながら先に進められたこれらのゲームと違い、『ハイドライド・スペシャル』はゲーム内に謎解きのヒントがなく、たとえ分かったとしてもキャラクターを育てなくては先に進めません。いま説明書を見れば、キャラ説明やアイテム説明がヒントだと理解できますが、当時はそれが分からず、またレベル上げ自体にもあまり面白さを抱けなかったんだと思います。
■セーブ&ロードを初体験! そしてその数か月後に“あの”ソフトが……!
その一方で初体験もありました。セーブとロードです。とはいえ、この頃のゲームのデータを残すのはパスワードで、あくまでファミコンの電源を切るまでのセーブ&ロード。任意の場所からやり直せるコンティニューみたいなものでしたが、当時としてはすごいものだと感じた記憶があります。
しかし、RPG、とくにコンピュータのRPGは非情なもので、レベルが足りていなければどんなに腕前が良くてもクリアするのは困難です。『ハイドライド・スペシャル』はアクションRPGで、敵を避ければそれなりに進めはしますが限度があります。そのまま「レベルを上げればクリアできる」ということに気づかず、詰みの状態であるのにセーブ&ロードして遊び続けてしまい。結果、ゲームを遊べる時間が限られていた自分にとっては「遊びがいがない」と他のゲームを選んだのは無理のなかったことだと思えます。
発売しばらくしてから友人の家でソフトを見たのが私と『ハイドライド・スペシャル』との出会いで、そののちに借りて遊んでもピンとこず、クリアもせずに返してしまいました。
いま思えば、RPGの遊び方をうまく理解できていなかったんだと思います。その後、テーブルトークRPGの『ダンジョンズ&ドラゴンズ』に傾倒して、さらに1986年5月には『ドラゴンクエスト』が発売。結局『ハイドライド・スペシャル』は、残念ながら自分の中でイマイチな思い出とともに記憶の隅っこへ追いやられてしまいました。