2023年に35周年を迎えるのが、1988年に新連載となった『週刊少年ジャンプ』の名作たちだ。この年は長年ジャンプ黄金期を支えていた『北斗の拳』と『キャプテン翼』、前年には『キン肉マン』が完結していた。
しかし、1988年から連載スタートとなった名作たちは、『ジャングルの王者ターちゃん♡』、『ろくでなしBLUES』をはじめ、新たにジャンプを支える活躍を見せた。今回は、そんな1988年に新連載となった作品を紹介していこう。
■令和の今ならあり得ない!? 下ネタ満載のギャグ漫画『ジャングルの王者ターちゃん♡』
徳弘正也氏の『ジャングルの王者ターちゃん♡』(のちに『新ジャングルの王者ターちゃん♡』に改題)は、1話完結のギャグ漫画としてスタートした。
令和の現在では考えられないような下ネタが、少年誌にこれでもかというくらい登場する。しかも、シリアスな話の流れのなか、急に挟んでくるあたりが素晴らしい。
もちろん、それ以外でも笑いが起きる要素はたくさんあり、筆者も腹筋崩壊レベルで笑わせてもらったものだ。その後、バトルが全面に押し出されてきてからも変わらず面白い。登場人物も個性豊かで、妻のヂェーンを始め、相棒のエテ吉、弟子のペドロなども、“ターちゃんファミリー”として盛り上げてくれた。
面白かったシーンはあり過ぎて語れないほどであり、当時の読者たちもそれぞれ爆笑シーンは異なるだろう。筆者的にはヂェーンとの絡みが一番楽しかった。ヂェーンは元トップモデルながら、ターちゃんと結婚後は激太りで恐妻家。ターちゃんよりも腕っぷしが強かったりもする。
十二神将(昆虫戦士)編では未来からきたスレンダーな美少女に対し、「ねえみんな この子あたしにそっくり」とヂェーンが驚いたように言うが、「中国は五里山の山中に笑いがこだました」とあるように、ターちゃんやアナベベたちは大笑い。その後の展開は言わずもがな……。
■極悪非道のイケメン主人公!『BASTARD!! -暗黒の破壊神-』
萩原一至氏による『BASTARD!! -暗黒の破壊神-』には、スラっとしたイケメン魔法使いの主人公・ダーク・シュナイダーが登場する。
ところが、この男が困ったもので、女と見れば見境なく手を出すわ、弱者をいたぶるわ、王国をめちゃめちゃにするわと大問題児……。それゆえ、赤ん坊のルーシェ・レンレンの体に封印されていたのだが、その保護者のような存在のヨーコにはいっさい逆らえないようになっている。
作中に登場する女性は美女ばかりで、絵も綺麗だった。暗黒の破壊神が復活したときには、鳥肌が立つくらい怖かった。あれを描くのは凄い……。
筆者的には四天王として登場するアビゲイルが大好きだった。ニヒルな性格で謎が多かったが、仲間に戻ったときは解説者役になるなど、少ない出番ながらも頑張っていた。とくにダーク・シュナイダーに向かって放った一本足打法の「アビゲイル・ホームラン」は傑作だったな。
■善良な主人公が実はハードパンチャー! 感動の名作『神様はサウスポー』
今泉伸二氏の『神様はサウスポー』に登場する主人公・早坂弾は、とにかく純粋で天然、そして善良過ぎるキャラクターだった(先に挙げたダーク・シュナイダーとは大違い……)。
父の病死により修道院に入った弾は、父のプロボクサーとしての遺志を継ぐためアメリカから帰国し、弱小の「井上ジム」から世界チャンピオンを目指す。
この井上ジムは両親がおらず、兄妹で経営しているようなものだった。兄妹の父親と弾の父親はプロボクサー同士で対決し、試合後に兄妹の父は亡くなっている。その死の原因のきっかけとなった早坂親子を恨むことなく、むしろ受け入れているあたり、すでに涙腺が危なくなる展開だった。
サウスポーの弾はストレートが強烈でどんな相手も吹き飛ばすほど。クリスチャンで超が付くほど善人な人物だが、悪人には強烈な怒りを表す。
この作品の特徴はとにかく泣ける話が多く、感動することだ。宿命のライバル・北村友樹のエピソードで、報道カメラマンの父親が戦場で銃弾に倒れ、激痛を堪えながら友樹の声を出さないようにするシーンには涙腺崩壊した。
また、夢があるから成功するとは限らない。とくに極貧生活だったころの弾親子のエピソードには堪えた。元プロボクサーだった父は国内タイトルもとれず、トレーナーを目指してアメリカに渡るもののまったく成功せず……。しかし、弾同様、思いやりがありすぎる父親で心温まるストーリーが多かった。