■「道楽」よばわりされてもとことん付き合う
インターハイを10日後に控え、安西先生は桜木のための個人特訓を準備する。
その間、湘北は安西先生の後輩が監督を務める学校に出向き、1週間の合同合宿を行うことになっていた。つまり、インターハイ直前の大事な時期にチームをほかの指導者に預けて、自分は桜木一人に付き合うというわけだ。いくらチームのプラスになるといえ、監督としては後ろ髪を引かれる思いもあったに違いない。
そんな思いをよそに、一人残されたことに不満を持つ桜木は「オヤジの道楽につきあってるワケにはいかねーんだよ」と言って、お決まりの“アゴタプタプ”をする。この「道楽」よばわりにはさすがの安西先生も一瞬呆気にとられた様子を見せたが、すぐに切り替えて桜木をうまくノセると、本作ファンにとってはもはや伝説級のエピソードとなっている「シュート2万本」合宿を開始するのだった。
道楽よばわりされてなお、夏の暑い体育館で、しかも老体のぽっちゃり体型でハーハーいいながら自らお手本を見せ、桜木の練習に根気強く丁寧に付き合う安西先生の姿勢に、頭が下がる思いの人はたくさんいるだろう。
もっとも、桜木の成長を目の前で見守ることを「この上もない楽しみだ」と感じた安西先生は、最後には「道楽か…」「そーかもしれんね」と桜木の暴言を肯定しているのだが。
意地っ張りでケンカっ早いクセモノぞろいの湘北メンバーを、その大きな懐でうまくまとめあげている安西先生。折しも、12月からは映画『THE FIRST SLAM DUNK』の公開が控えている。どんな展開になろうとも、勝負の裏には必ず安西先生の包容力があることを頭の片隅に置いておくと、一味違った見方ができるかもしれない。