『SLAM DUNK』安西先生の“懐が大きすぎるエピソード”3選…タプタプや暴力事件、道楽呼ばわりにも怒らずの画像
『SLAM DUN』第16巻 [DVD](東映)

「あきらめたらそこで試合終了だよ」……この言葉に励まされたことのある人は少なくないだろう。井上雄彦氏によるバスケットボール漫画『SLAMDUNK(スラムダンク)』で、主人公・桜木花道が属する湘北高校バスケットボール部の監督を務める、安西先生の言葉だ。

 カーネル・サンダースにも似た、いかにも温厚そうな白髪、白髭、メガネのまあるい姿で、ニコニコとベンチに座っている姿が印象的である。今回は、そんな安西先生の懐の大きさが分かるエピソードを3つ紹介したい。

■桜木の数々の暴挙にも難なく対応

 湘北メンバーだけでなく他校の監督からすらも一目置かれている安西先生だが、そんな偉い先生に対する桜木の暴挙の数々は有名である。

 呼び方は「監督」でも「先生」でもなく「オヤジ」だし、試合中にボールを追いかけて安西先生のお腹に飛び乗ったこともある。また、とくによく知られているのは、桜木が何かにつけて安西先生の二重アゴの肉をタプタプと叩くシーンだ。

 試合に出してほしいとき、認められて嬉しいとき、納得がいかないときなど、桜木のあらゆる訴えから引き起こされるこの“タプタプシーン”は、本作の名物にもなっている。

 桜木の暴挙に対してチームメイトは慌てるやら怒るやらだが、当の安西先生はというと、たまに戸惑う様子を見せながらもとくに止めはしない。

 一般的な選手と監督では考えられない関係性だが、しかし、こうした暴挙をも包み込める大きな懐があってこそ、桜木も安西先生を信頼して「バスケットマン」としての才能を開花させるに至るわけだ。

 陵南高校の田岡監督や海南大付属高校の高頭監督も、クセのある選手とうまく付き合っている様子が描かれているが、彼らのもとでは桜木はおそらく反発していただろう。

 若いころは「白髪鬼(ホワイトヘアードデビル)」の異名で恐れられていたそうだが、現在では見た目も中身もすっかり丸くなり「白髪仏(ホワイトヘアードブッダ)」と呼ばれるまでになった安西先生だからこそ、成しえた偉業のひとつではないだろうか。

■騒動を起こしたメンバーにはプチストライキ

 インターハイ県予選を控えた時期、元バスケ部だった3年生の三井寿が不良仲間を連れて体育館に乗り込んでくる。過去にバスケ部2年生の宮城リョータに絡み、入院するほどのケガを負わされた三井。退院後もしつこく宮城につきまとい、その際ついでに桜木からもコケにされたこともあって、バスケ部まで襲撃しに来たのだ。

 もし暴力事件など起こせば、バスケ部は当然インターハイ予選出場停止、最悪の場合は廃部もありうる。そのため一方的にやられ続ける部員たちだったが、とうとうキレて反撃した1年生エースの流川楓を皮切りに、宮城、桜木も続いての流血騒動へと発展した。

 最終的には桜木と三井の不良仲間たちが汚名をかぶってくれることになり、桜木、流川、宮城、三井の暴力は表沙汰にならずには済んだ。

 一歩間違えば廃部になったであろう、リスキーな事件。退部させられてもおかしくないこの4人に対して、安西先生がとった措置はどのようなものか……?

 それは、県予選の初戦で「スタメンから外す」こと。そして、桜木がブツブツと文句をたれても「プイ」と顔をそらして「キミたちはケンカしたからおしおきです」と言ったり、4人が揉め始めても言葉すらかけることなく「つーん」とすまして無視したりする。言うなればプチストライキだ。懐どうこう以前に、なんと可愛らしい対応なのか……。

 その後、反省したのか大人しく試合観戦をしている4人に、安西先生は「君達」「反省してるかね?」「もうケンカはしないかね?」と念を押して確認すると、途中からこの全員を試合に投入する。異例ともいえる寛大な措置だ。そしてこの4人抜きにはのちの湘北の快進撃はなかったわけだから、湘北は安西先生の懐あってのチームだといっても過言ではないと思う。

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