ゲーム『ドラゴンクエスト』シリーズの魅力の一つに、世界中を冒険できる楽しみがある。洞窟を抜け、船で海を渡り、空飛ぶじゅうたんや気球で山を越え、それまで行けなかった新しい街につくたび、どんな出会いが待ち受けていて、どんなストーリーが展開するのかワクワクしてしまう。
しかしそんな気持ちとは裏腹に、中には入った第一歩から哀愁漂う不吉なBGMが流れ、どんよりと荒廃したグラフィックで描かれる街もある。なにかしらの問題を抱えているのは一目瞭然で、主人公たちの到着を待っているのだ。
そこで、今回は暗く悲しいストーリーの舞台となっている街と、その街が主人公たちが到着後、どのように変わったのかについて振り返りたい。
■毒ガスとモンスターに襲われた炭鉱の町「アッテムト」
まずは『ドラクエ4』の第4章と第5章で訪れる炭鉱の町・アッテムト。ワールドマップから街へと画面が切り替わった瞬間に、あらわになる悲惨な現状は『ドラクエ4』屈指のショッキングな場面ではないだろうか。
アッテムト鉱山から放出される毒ガスの影響により、街の中には毒沼があり、白骨死体があちこちに放置されている。そして街には、戦闘で全滅したときに使用されるBGM「エレジー」が流れている。とにかく街全体がどんよりとしており、生きている住人たちも毒の影響か疲労困憊。設備も宿屋と教会、墓場しかない。また住人たちや夜に訪れた際の人魂のセリフなど、ひたすら陰鬱な空気が漂っている。
多くのプレイヤーの記憶に残っているのは、白骨化した死体がもっている「おとうさん はやくかえってきてね。おとうとのピピンもさみしがってるわ。こんど ふたりで あいにいきます…」という手紙だろう。
主人公たちが訪れてもこの状況を変える術はなく……第5章では状況は悪化し、ほとんど街は滅びた状態になってしまう悲しい街だ。