■運をも味方する母の『ポケモンGO』生活
とはいえ、最初はいろいろとめちゃめちゃだった。そもそもポケモンを捕まえることができない。モンスターボールをクルクル回しながらのカーブスローのやり方を教えたところ、行く先が見えないほどどこか遠くに飛んでいく。というか、おやつでさえまっすぐに飛んでいかず、相棒のポケモンたちが口に運んでもらえなくて困っていたほどだ。
それでも慣れというものは不思議で、母はあっという間に『ポケモンGO』に馴染んだ。今や、病院の待ち時間など、恥ずかしいから周りに分からないようにすばやく(!?)カーブボールを投げたりもしているらしい。(絶対バレていると思う)
そして、持ち前のマメさで次々と最高の相棒のしるしである「がんばリボン」をつけまくっているし、ジム用のポケモンを用意し、こまめに置いてきてはコインを稼ぎ、リモートレイドパスをゲットしたりもしている。
また、最近はポケモンの個体値にまでこだわるようになった。不思議なのが、なんとなく散歩をしてきては個体値100%ポケモンを頻繁に捕まえてくること。ちなみに、それらを母は「ピンクのポケモン」と呼んでいる。「こうげき」「ぼうぎょ」「HP」がすべてMAXの「15」になると、ゲージがピンクになるからだ。
そういえば、シャドウポケモンをリトレーンすると個体値が2ずつ上がる「リトレーン100」を知ったときの母の喜びようはすごかった。浄化されてキラキラと光るポケモンの様子を眺めては子どものように嬉しがり、自慢してくる。毎日ロケット団の気球と戦うことを日課にしているのも、リトレーン100を狙っているからにほかならない。
レベルはもうすぐ46になる母のアカウント。リトレーン100が増えているのは母のマメさによるものだとしても、個体値100%ポケモンによく遭遇できているのは、運営会社のナイアンティックが母の努力を認めてくれているのか、運も味方してくれているように思える。
■そうして次々と家族が巻き込まれていった
このように母が没頭する様子を見て、まだ嫁に行っていないゲーマーの妹も数年ぶりにポケ活に参戦。それにつられて父もなんとなくダウンロードをし、気づけば家族全員でポケ活をしている我が家。レイドバトルに出かけていき、一致団結して伝説ポケモンとの戦いを繰り広げることもある。
とはいえ、父は始めて3カ月もしないうちに脱落したのだが。当初はポケモンの原作ゲームばりに自転車に乗ってポケ活にいそいそと出かけていたが、無謀にもCP50000超えの伝説ポケモンを1人で倒そうとしたらしく、手持ちのポケモンが次々と“ひんし”になり、回復させる「げんきのかけら」を集めるのに辟易したことが興味をなくすきっかけだったらしい。
母の話に戻るが、孫である筆者の息子との距離も『ポケモンGO』のおかげで近い気がする。
ポケモンの鳴き声当てをさせて褒めちぎったり、レイドバトルに勝利後、伝説のポケモンの捕獲に手間取るとすぐに頼んだりなど、孫と祖母の関係ではなく、まるで友達のようなのだ。
相棒のポケモンには「◯◯カイリュー」「◯◯バンギラス」など、孫の名前を入れて探しやすくしていたりも。そんなわけで母のポケモンバッグには、息子の名前がついたポケモンがズラリと並んでいる。
息子はスポットライトアワーがある火曜の18時過ぎに母がいないと、「また、ばぁばはポケモン捕りに行ったの?」なんて言う。これが日常会話となっているのだ。筆者が子どものころ、「ゲームをしたらバカになる」なんて言ってファミコンすら買ってくれなかったお堅い母はどこへ行った?と言いたい。