強敵を倒すため、強くなるため、過酷な「特訓」を課している少年漫画キャラは多い。往年の名作で例を挙げるなら、牛やヒグマと戦った『空手バカ一代』の飛鳥拳、幼い頃より「大リーグ養成ギブス」を装着していた『巨人の星』の星飛雄馬などが有名かもしれない。
命がけの特訓なら『ダイの大冒険』でポップが消滅覚悟でマトリフのメドローアを相殺し、『BLEACH』の黒崎一護は浦原喜助との特訓で始解「斬月」を手に入れた。また、言葉で聞くとほのぼのした印象なのが、『HUNTER×HUNTER』でゴンはヒソカからプレートを奪うため「釣竿」を振る特訓をし、『ドラゴンボール』の悟空とクリリンは亀仙人のもとで「亀の甲羅」を背負いながら修行をした。
こうした「特訓」には私たちの「中二病」心をくすぐられそうなものから、なかには「……あれ?」と思わざるを得ない内容までが存在する。そこで、今回は多くの「特訓」が存在したであろう『週刊少年ジャンプ』の名作から、「トンデモ特訓」が描かれた漫画をいくつか紹介したいと思う。
■刃の扇風機から玉を取る?右腕が動かないながらも必殺技を身につけた「いぶし銀」
1977年より連載していた車田正美氏の漫画『リングにかけろ』は、主人公の高嶺竜児が姉・菊からボクシングを学びながらさまざまな敵と戦う「ボクシング」漫画だ。
「パワーリフト」や「パワーアンクル」を装着した練習や、剣崎順が過度な利用で腕を壊した「アポロエクササイザー」のエピソードなど、初期はそれなりの理にかなった「特訓」が描かれていた。
そんな作中で、筆者が最初に思い浮かべた「トンデモ特訓」が志那虎一城の「真剣付扇風機」だ。
志那虎の実家は京都で剣術道場を開いており、自身も幼い頃より父親から厳しい稽古を受けていた。ある日、父親は「真剣付扇風機」から水晶玉を取ってみせると、息子にも同じことをするよう強要し、やらなければ「この場でおまえをまっぷたつにしてやる」と「真剣」で脅した。
常軌を逸した「特訓」に失敗した志那虎は「右腕」に大けがを負い、後遺症で動かすこともままならなくなってしまう。ところが、志那虎はそれに腐ることなく倉の中で過酷なトレーニングを重ね、数年後には父親の前で刃の枚数を増やした扇風機から「左腕」で玉を取ってみせたのだ。
こうして誕生したのが志那虎の神業ディフェンスと、0コンマ数秒の間に「左腕」だけで3発のパンチを入れる必殺ブロー「ローリングサンダー」であった。
後に息子がピンチに陥った際にはテレビの前で「負けたら自分も腹を切る」と言いながら再び真剣を抜いてしまう父親。とりあえず、息子や娘のためにも感情で刀を抜くのは止めて欲しい。