■古都・鎌倉を舞台にミステリー作家とその妻が不思議でユーモラスな事件の謎を解く!『鎌倉ものがたり』

『鎌倉ものがたり』は1984年より『漫画アクション』で連載が開始され、2000年に『まんがタウン』に移籍した作品。「鎌倉はミステリーがいっぱい」をキャッチフレーズに、主人公・一色正和が妻の亜紀子や警察署とともに謎や事件を解決していく。実写映画ではハンサムな一色を堺雅人が、愛らしい亜紀子を高畑充希が演じた。

 同作の魅力を一言で語るなら、鎌倉を舞台にさまざまな妖怪や怪異が登場する点だろう。一色はミステリー作家という職業柄、難事件が起きたときには鎌倉警察署(※実際に存在する)から頼りにされたり、好奇心にかられて自ら首を突っ込むことがちょくちょくあるのだ。人ならざるものが生息する鎌倉では頻繁に怪異が起きるため、警察署内に設置された「心霊捜査課(特捜課)」には妖怪を親に持つ個性的な刑事も登場する。

 なかでも筆者のお気に入りは、葉山警察署(※実際に存在する)に所属する「タヌキでありながら初めて刑事になった」狸山ポン吉だ。タヌキながら義理人情に厚く腕っぷしも強いポン吉が、現在は神奈川県葉山警察署のサイト上で「安全安心サポーター」として活躍しているのがうれしかった。

 また、本作のキャラがたびたび『三丁目の夕日 夕焼けの詩』に出演しているのもファンには堪らない演出である。

■意外な怪作も?SF作品や短編集にドキドキハラハラ!

 ここからは「アクションコミック」の連載作や短編集の中から、筆者が「面白い!」と感じた作品を紹介したいと思う。

『ポーラーレディ』は魔法販売会社「ポーラー社」に勤める主人公・蘭子が、人々の欲望を叶える魔法を売る物語だ。魔法購入者の多くは本当の強さや幸せを見つけたりするのだが、中にはとんでもないしっぺ返しを受ける者もいる。第2話「ハンター」では猛獣を撃ち殺すことに喜びを覚える購入者が、ティラノサウルスを狩るため魔法で過去に行くも自身のうかつな“約束”で元の時代に戻れなくなってしまう。

 SF作品『ミステリアン』も面白い。人類を監視するため地球にやってきた宇宙人「ミステリアン」の広美が、人々の生活に触れながらさまざまな出来事を体験する物語。広美は宇宙人のため世間とはズレた価値観の持ち主であるが、「地球病」に侵され自堕落な生活をおくるなどどこまでも憎めないキャラである。

 他にも、怪盗ながら人情味あふれる『蜃気郎』や短編をまとめた『ヒッパルコスの海』などは、独特の西岸ワールドを楽しめた。

 11月18日から27日まで、東京スカイツリー・ソラマチ5階で初の大規模展覧会となる「西岸良平 画業50周年展」が開催される。同展では『三丁目の夕日 夕焼けの詩』や『鎌倉ものがたり』を中心に、これまで発表した短編作品などの原稿や西岸氏の愛用品などが展示される。フォトスポットや同展のオリジナルグッズ販売もあるので、西岸ワールドを堪能してみてはどうだろうか。

■西岸良平画業50周年記念展
https://saiganryohei-50th.com/

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