2022年は、『三丁目の夕日』や『鎌倉ものがたり』で知られる漫画家・西岸良平氏の画業50周年となるメモリアルイヤーだ。
1話10頁ほどの『三丁目の夕日』には、昭和レトロな風景や人々の何げない日常生活が笑いと涙でつづられている。2005年公開の映画『ALWAYS 三丁目の夕日』が大ヒットとなり、以降『ALWAYS 続・三丁目の夕日』や『ALWAYS 三丁目の夕日'64』が制作・上映された。
一方の『鎌倉ものがたり』は、古都・鎌倉を舞台に魔物や妖怪などを交えながらミステリーを解き明かす作品。同作も『DESTINY 鎌倉ものがたり』のタイトルで2017年に映画化され大ヒットを収めている。
西岸氏には劇画調のタッチで描かれたシリアス漫画やSFなど多彩なジャンルが存在するのをご存じだろうか。今回はコミックスや公認データブックなど、多くの西岸作品を所持する筆者がその魅力ある世界を紹介したいと思う。
■知らない街なのにどこか懐かしい『三丁目の夕日』
西岸良平氏の代表作とも称される漫画『三丁目の夕日』。ところがコミックスの表紙には『三丁目の夕日 夕焼けの詩』と書かれており、「夕焼けの詩」がメインタイトルとして大きく記載されている。ちなみに所持していたコミックスを確認してみたところ、2012年3月に発売された60巻から「三丁目の夕日」表記が大きくなっていた。
同作は1974年より小学館『ビッグコミックオリジナル』にて連載がスタートし、現在は2022年5月30日に発売された69巻が最新刊だ。物語に明確な主人公はいないが、鈴木オートの一人息子である小学生・鈴木一平や、駄菓子屋を営む茶川竜之介などが多くの物語でメインとなっている。
筆者は映画公開以前にコミックスを集め出したため、当時は近隣に全巻揃っている本屋がなく取り寄せ手続きをおこない、途中の巻から最新刊までを大人買いした。そうしてかなりの時間を要した後に本屋からの「入荷」連絡が届き、注文した前半部分のコミックスを読んで驚いてしまう。
「あれ?全然ほのぼの、していない……」
それもそのはず。実は『三丁目の夕日 夕焼けの詩』の1巻には西岸氏が本作を連載する前に執筆していた初期作「プロフェッショナル列伝」、2巻や7巻などにも『ビックコミックオリジナル』に掲載されていた短編が収録されていたのである。特に2巻に収録された西岸のデビュー作「夢の平四郎の青春」や「狂った映像」などは、その絵柄やブラックな展開から『三丁目の夕日』だと思って読むと面食らってしまう内容だ。
とはいえ、個人的に初期の西岸作品には毒のような魅力もあるので、巻数の若い『三丁目の夕日 夕焼けの詩』も読んでみて欲しい。