1987年にファミリーコンピュータ用ソフトとして誕生したRPG『ファイナルファンタジー』シリーズ。複雑なストーリーと、ドットや3Dで繊細に描かれるグラフィック、また植松伸夫氏が生み出す最高のBGMに、多くのファンが心を奪われてきた。
時にはバトル中にもセリフが盛り込まれるなど、同時代のRPGの中でもとりわけ高いドラマ性が特徴的だった同シリーズ。壮大な物語の中では悲劇が描かれることもあり、惜しくも退場してしまったキャラの最期の姿に涙したことのあるプレイヤーは少なくないのではないだろうか。
そこで今回は、数多くの名キャラが登場してきた『ファイナルファンタジー』シリーズから、惜しくも命を落としたかわいそうなキャラたちを振り返りたい。
■マスクの下には悲しみが『FFVI』より、シャドウ
まずは1994年のスーパーファミコン用ソフト『ファイナルファンタジーVI』より、主人公のひとりであるシャドウ。
彼は、1週目でサイドイベントを進めなければ、多くの場合は魔大陸でお別れとなる。条件を満たさなければ魔大陸とともに命を散らし、最後まで出てこないという、これはこれでかわいそうな結末となってしまう。
セリフはほとんどなく、すべてが謎の非情な殺し屋であるシャドウ。犬のインターセプターだけに心を許している彼だが、彼と宿屋に泊まることで一定の確率で「夢」を見せられ、そこから彼の過去を知ることができる。
この夢では、過去に相棒・ビリーを裏切ってしまったことがトラウマとなり、彼が苦しみ続けていることが判明。そして夢の解釈次第では、その後サマサの村で介抱されることとなり、そのときに女性と親密な仲となる。しかしすぐに村を出ていくことになり、その女性とは別れてしまう。と、こちらも悲劇的な経緯が描かれている。
魔大陸で条件を満たすとシャドウが仲間になるが、ラスボスを倒して瓦礫の塔から脱出する最中に、シャドウは崩れる塔の中に残る選択をするのだ。最後も自責の念に囚われつつ、自ら命を断つ道を選んでしまう。生涯を通して、辛く悲しい感情をマスクの下に隠し続けている。という格好いいながらも、かわいそうなキャラだった。
■名セリフが多かった『ファイナルファンタジーV』より、ギルガメッシュ
また味方だけでなく、敵キャラへも感情移入してしまうのが『FF』シリーズで、『ファイナルファンタジーV』のギルガメッシュも最期の姿が印象的なキャラだった。
同作の黒幕・エクスデスの親衛隊長として第二世界から登場するギルガメッシュは、敵幹部ながらも人間臭く憎めない言動が魅力的なキャラだ。名曲「ビッグブリッヂの死闘」がBGMで使われたり、レア装備である「源氏シリーズ」を盗めたりと、こういった点でも彼のことを好きだという人は多いはず。
どこまでもドジで明るいギルガメッシュではあるが、ストーリーが進むにつれて、どんどんと悲劇に見舞われてしまう。ゼザの船団では親友のエンキドウがやられ、エクスデス城では主人公よりも先にワナに引っかかってしまったことでエクスデスの怒りを買い、凶悪なモンスターのはびこる次元の狭間へと飛ばされてしまう。そしてその後、最終局面までずっと幽閉されていたところ、バッツたちと出会うことになる。そこから間もなく、エクスデスの手下の一人であるネクロフォビアと相打ちとなり、その命を散らした。それまでの戦いでも数々の名言・珍言を残した彼だが、最後の一連のセリフは涙無くして見られない。
ギルガメッシュのキャラクターや、主人公であるバッツ自体が明るくサバサバとした性格なので忘れがちだが、そもそも『FF5』は、歴代シリーズでもかなりハードなストーリーだ。もしもリメイクされることがあったら、ガラフとともに仲間になる追加ルートを期待したい。