■お母さんに共感する人多数！「たかし君」
最後に「たかし君」というエピソードを紹介したい。
まる子の同級生で朝が苦手なたかし君は、遅刻をするたびにクラスメイトの関口君と佐々木君からぶたれるなどされ、いじめられていた。
ある日、たかし君とその母親に会ったまる子。”早起きする”という約束で子犬を飼うことになったと嬉しそうにしていたたかし君だったが、一方でたかし君の母は遅刻のせいで我が子がいじめられていないか心配だとこぼしていた。
帰宅し、たかし君のことを家族に話すまる子。父・ひろしは“殴られて男は育つ”と呑気に答えるが、祖父・友蔵は「まる子がぶたれたらおじいちゃん泣いちゃう うお〜〜っ」と家族が引くほど大号泣。それに続いてすみれも「おかあさんも泣いちゃう…」と涙ぐむ。そんな母を見て、まる子の脳裏にはたかし君のお母さんの顔が浮かんでいた……。
次の日、たかし君は遅刻せずに登校。安心するまる子であったが、しかし今度は給食の牛乳を残したことを貶し、責め立てるいじめっ子たち。無理やり口に牛乳を流し込むなどひどい状況で、しまいにはたかし君の母お手製の給食袋をボロボロに踏みつける始末。
見かねたまる子は「たかし君に謝んなよ！」と強く抗議するのだが、体を突き飛ばされてロッカーの取手に頭をぶつけて流血してしまう。思わず「どうしよう 学校でぶたれてケガしたなんて言ったら……おかあさん泣いちゃうよ」と母を思いやり、まる子は涙するのだった。
いじめという重たいテーマで物議を醸した話だが、母娘の愛が感じられる名エピソードだと思う。ちなみにこの話のオチは、大ケガをしたまる子を見て酔っ払っていたひろしが「ドジだな〜まったく まる子のドジにカンパーイ」と笑いものにする……というもの。オチによって見事に軽さを加えたさくらさんの秀逸さが光るエピソードだった。
さまざまな世代から愛される『ちびまる子ちゃん』。さくらさんの描く本作は、ときに予想外なオチがつくことで見る人を楽しませてくれる。ぜひあらためてさくらさんワールド全開の『ちびまる子ちゃん』を、じっくり堪能してみてはいかがだろうか。
ツイート
シェア
LINEで送る
