さくらももこさんの国民的アニメ『ちびまる子ちゃん』(フジテレビ系)を見て育ったという人は少なくないだろう。本作はさくらさんの小学生時代の実話をもとにして描かれた漫画で、1986年『りぼん』(集英社)で連載が始まってから現在にいたるまで、たくさんのファンの心を掴み続ける名作だ。
コメディ要素がありながらも、思わずじーんと泣けてしまう感動エピソードも多々ある『ちびまる子ちゃん』のなかから、今回はまる子と母・すみれにまつわる母娘エピソードをお伝えしていこう。
■ファンからも人気のエピソード!「おかあさんの日」
まずは、母の日の出来事を描いた「おかあさんの日」を紹介したい。
母の日に姉・さきこやクラスメイトたちがプレゼントを渡そうと計画していることを知り、自分も何かしようとお小遣いをかき集め、ハンカチを用意したまる子。
母・すみれにプレゼントを渡すとき、事件は起こってしまう。まる子が渡したハンカチを見たさきこは「おかあさん そのハンカチと同じの持ってるよね」と、指摘してしまうのだ。
すみれが慌ててさきこを止めるも、すでにまる子は大きなショックを受けたあと。「もう持ってるなら ちっともうれしくないじゃん」と、ハンカチをくしゃくしゃに丸めて放り投げ、泣きながら部屋を駆け出ていってしまう。
そのときふと、すみれの目に留まったのは、二人の似顔絵とともに「おかあさんへ いつも、どうも、ありがとう。 まる子より」と、日頃の感謝が綴られていたメッセージカードだった。自分を喜ばせるためにまる子が頑張ってくれた姿を想像し、思わずすみれは涙ぐむ。
自室で泣いていたまる子のところへやって来たすみれは、自分の使っていたハンカチをまる子にあげると言う。まる子が「…なんで?」と聞くと、「だっておかあさん…まる子のくれたハンカチがあるんだもの」と、嬉しそうに答えたのだった。
感動的に締めくくられたかに思えたが、ここで終わらないのが“さくらさん流”である。その後、すみれの膝下で眠ってしまったまる子を父・ひろしが抱き上げようとした瞬間、まる子から「プー」とオナラが。ひろしが「くっせェ〜……」と呟いたところで、話は終了したのだった。
大切なプレゼントがダメになって悲しむまる子の無垢な気持ちや、すみれの素敵な対応に胸が熱くなるこのエピソード。普段手のかかる子ほど可愛く、精一杯行動してくれた姿が愛しくてたまらなかっただろうと、つい思いを巡らせてしまう。