■単行本3巻に収録された感動作!「ひとりになった日」
次は『ちびまる子ちゃん』単行本で、本編後についているエッセイ漫画『ももこのほのぼの劇場』から。母娘の別れが描かれた「ひとりになった日」は、何度読んでも泣けてしまう話だ。
就職をし、東京で1人暮らしをすることになったももこ。引っ越しの手伝いで東京へ来ていた母・すみれが地元へ帰るとき、ももこは1人暮らしをする高円寺駅から東京駅まで見送りに行く。
ももこがホームで一緒に電車を待とうとするも、「こんどはおかあさんが階段のところまで送っていくから…」と、逆に見送ろうとするすみれ。寂しさから堪えていた涙が思わず溢れ出すももこに「ばかっ 泣いちゃダメッ」と諭しながら、自身も涙をこぼす。
すみれに見送られながら駅の階段を降りていくと、「からだに気をつけてね」の声が雑踏に混ざって聞こえてきて、さらに悲しい気持ちになるももこ。ひとり家に帰ると、母が作ったキンピラごぼうにアイロンがかけられた服……そして、机の上には「ももこへ」と書かれた手紙があり、1人暮らしへの注意のほか夢を応援する言葉が添えられてあって、ももこは再度大泣きするのであった。
初めて親元を離れる娘の気持ちがリアルに描かれたこのエピソードは、とくに上京を経験したことがある人の胸に刺さるだろう。
しかし、そんな感動的な旅立ちからわずか2カ月後、ももこは”居眠り”が原因で会社をクビになる。「今では流す涙もないと母はあきれているのであった……」と綺麗にオチがついており、ここまで読んできたセンチメンタルな気分が一気に吹き飛ばされたのを感じたのであった……。