1999年12月22日にエニックス(現スクウェア・エニックス)から発売された人気ゲーム『ヴァルキリープロファイル』。2022年9月29日にはシリーズ最新作の『ヴァルキリーエリュシオン』が発売され、第1作をPS5・PS4向けに移植する『ヴァルキリープロファイル-レナス-』が2022年12月22日に発売となる。
『ヴァルキリープロファイル』は北欧神話をベースに、神々の戦いをテーマにしたストーリー。その尖兵となって戦うのは「エインフェリア」と呼ばれる死んだ人間の魂たちで、人間たちが死に至るエピソードが当時最新鋭だった美しいグラフィックで描かれており、いずれも重厚で考えさせられる内容だった。今回は、そんなエインフェリアたちの悲しい死亡エピソードを振り返ってみたい。
■己の心に負けて死亡した倭国の侍
最初に紹介するのは、倭国出身の洵(じゅん)。洵は二刀を扱って戦う侍で、我流の剣法「神宮流」を使うキャラ。
目が不自由な双子の阿衣(あい)を妹にもち、治療方法を探すため旅をしていたが、あるとき万病に効くとされる「魂玉石」の存在を知り、「魂玉石」を持つ鬼が住むとされる洞窟・魔境窟に乗り込む。
洞窟の奥に進み鬼と対峙したとき、鬼は洵に問う。「自分が死んで妹が生き長らえるのと、妹が死ぬまでお前がそばにいてやるのでは、どちらが妹にとって幸せなのだ?」と。洵は「俺は死なない」と叫び、鬼から力づくで魂玉石を奪った。この強奪こそが鬼のような行動といえるだろう。
そのとき鬼は消え去ったが、代わりに洵が鬼となってしまう。魔境窟は自分の心を映し出す洞窟で、洵が対峙したのは鬼ではなく自分の心だったのだ。鬼となった洵は主人公・レナスに殺され、魂はエインフェリアとなる(レナスは魂を選定する役割をもつ神)。
レナスは「双子は魂を共有しているので、互いに影響を与える」と、阿衣の目が見えないのは洵の心が曇っていたからだと言う。洵の心が晴れたことで阿衣の目は見えるようになったが、阿衣の「兄と一緒にいたい」という願いは叶わなかった。
ちょっとしたきっかけがあれば、兄妹は幸せになれたのではないだろうか。あとひとつ何かが足りなかった悲しいエピソードだった。