■とびきりの愛を振りまく嘘つき

 ラストはアニメの制作も発表された赤坂アカ氏・横槍メンゴ氏による芸能界漫画『【推しの子】』から星野アイ。

 物語は、とある事件で命を落とした主人公が、記憶を持ったまま“推し”であるアイドルの子ども・アクアとして生まれ変わるところから動き始める。彼と彼の双子の妹・ルビーは紆余曲折のすえ芸能界に入り、個性的な仲間たちと出会うことに……。そもそもの設定はファンタジーだが、SNSでの炎上をはじめとした社会問題や芸能界の闇が描かれており、どこまでもリアルな面もある。

 主人公・アクアの推しにして母親である星野アイは、アイドルグループ「B小町」の絶対的センターである。星のハイライトが入った大きな目とロングヘアが特徴の美少女で、周りを惹きつけてやまない圧倒的なオーラの持ち主だ。

 その魅力は、アイが自分の魅せ方を熟知しているからこそ生まれるものである。彼女はアイドルを「嘘という魔法で輝く生き物」と考えており、不都合な部分を隠し通してキラキラ輝くことが仕事だと考えていた。だからこそ妊娠した際にも、事実を一切公表せずに双子を産み、素知らぬ顔でアイドル活動を続けることを選ぶ。所属事務所の社長も「本物(マジモン)の嘘つき(アイドル)」と評している通り、超一流の嘘つきなのだ。

「嘘はとびきりの愛なんだよ?」と語り、きれいな嘘でファンをやさしくだまし続けるアイ。そのまぶしすぎる光に惹きつけられてしまった人間たちは、彼女を愛し、崇拝し、ある意味では人生を狂わされることになる。作中では彼女をめぐり、さまざまな思惑が渦巻くことになるのだが、ぜひそれは実際に本編を読んで確かめてみてほしい。

 今回は数いる“嘘つき”キャラクターのなかから、特に筆者の印象に残っている3名を紹介した。自分の利益や保身のため、本音を隠すため、誰かを喜ばせるため……理由も立場もそれぞれだ。しかし3人とも嘘つきであるにもかかわらず、むしろ嘘つきだからこそ、見る者を惹きつける不思議な魅力を持っている。

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