嘘をつくことは悪いことだが、この世から嘘がなくなることは決してない。どんな善人であろうと、日常生活を円滑に送ったり周りとの関係をうまく保ったりしようと思うのなら、ある程度の嘘は必要だ。正直なだけでは生きていけない世界なのである。だから大小の差はあれど、誰もが1度くらい嘘をついたことがあるはずだ。
しかし中には、息をするように嘘をつくとんでもない“嘘つき”もおり、フィクションの世界ではそういった嘘つきキャラが人気を集めることも少なくない。今回はその中から、3名の個性豊かな嘘つきを紹介していこう。
■不思議と憎めない(?)常軌を逸した嘘つき
まずは藤本タツキ氏による『チェンソーマン』から血の悪魔・パワー。
悪魔がはびこる世界を舞台に、主人公・デンジを中心としたデビルハンターたちの奮闘が描かれる同作。現在「少年ジャンプ+」にて第2部「学園編」が連載中で、2022年10月にはアニメ化も控えており今後ますます盛り上がりをみせるだろう。
同作に登場する嘘つきといえば、人間の死体を乗っ取って“魔人”となった血の悪魔・パワー。彼女は日常的に嘘をつき、しかもその嘘を本当のことだと思い込んでしまうというとんでもないレベルの嘘つきだ。
コミックス第3巻の巻末おまけ「パワーの事を知ろう!」では「パワーは虚言壁があるぞ!」と明記されており、マーボーナスを知らないのに好物と嘘をついて秒で撤回する、アキのポイントカードのポイントを勝手に使い「は…? 使ってないが? 死ね!」と逆ギレする、デンジの血を勝手に吸って「は…? 吸ってないが?」ととぼけるなど、人間性(?)を疑うエピソードが描かれた。この「は? ~~だが?」という絶妙にムカつく構文もポイントである。
本編でもパワーの嘘つきぶりは炸裂しており、なかでもコベニの車にまつわるエピソードは衝撃的だった。彼女はコベニの新車を自分の車だと言い出し、免許を持っていると言い張って勝手に運転し、あろうことか人を轢いてしまう。すると先ほどの言動から一転、「ウヌの車じゃ ワシのせいじゃない」と、何も悪くないコベニに責任転嫁をし始めた。あまりにも自然に嘘をつくものだから、本当にコベニのせいなのではないかと勘違いしてしまいそうになる。結局、轢き殺した相手はたまたま敵だったことが明らかになるが、その途端にすべてが計画通りであるかのように振る舞っていた。ほんとうにとんでもない悪魔である。
パワーのつく嘘は常軌を逸しており、そのぶっ飛びぶりが笑いを誘う。現実にいたらまずかかわりたくないタイプの人物ではあるが、漫画のキャラクターとしては愛すべき子だ。また嘘つきではあるものの基本的に素直で、よく言えば単純、悪く言えばおバカなので、見れば見るほど愛おしく思えてくる……かもしれない。