■クェスがシャアと出会わなければ、悲劇の連鎖は回避できた!?
映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』に登場する少女クェス・パラヤは、地球連邦政府の参謀次官、アデナウアー・パラヤの娘。紆余曲折あってブライトが艦長を務めるラー・カイラムに乗りこむことになり、そこで出会ったアムロやハサウェイと行動をともにする。
彼女の家庭環境は複雑で、父が与えてくれなかった“父性”を他人に求めて、まずは年上のアムロにひかれた。しかし、彼にはチェーンという恋人がいたのでつけ入る隙がないことに気づき、ロンデニオンで偶然出会ったシャアのもとへ……。
大人の男性であるシャアにクェスは父性を求め、一方のシャアはクェスが秘める圧倒的なニュータイプ能力を戦争に利用する。その結果、クェスは戦場で命を散らすこととなる。
クェスの死はハサウェイを大きく変え、それが『閃光のハサウェイ』の物語へとつながっていく。それに皮肉なことだが、自身のもとに来た女性を私兵として利用したシャアの行いは、かつてシロッコがレコアに行った仕打ちと同じである。
もしロンデニオンで出会ったシャアが彼女を連れて行かなかったら、クェスは死なずに済んだのかもしれない。
ハンサムでプレイボーイな一面もあるシャアだが、男性の目線からも「女性に対してその扱いはないだろう」と感じるシーンは多い。だが、どれだけ女性とかかわりを持とうと、ずっと彼の心には20歳のときに出会った理想の女性・ララァがいるのだろう。
シャアが出会った女性たちの気持ちを汲み取り、受けとめることができたなら、また違う結末があったのでは……と思わずにはいられない。