■「ハマーン・カーン」が見せた複雑な乙女心
『機動戦士Zガンダム』で描かれたグリプス戦役で、シャア、シロッコと三つ巴の戦いを繰り広げたハマーン・カーン。続編の『機動戦士ZZガンダム』においてはラスボスとして君臨した、まさに女帝と呼ぶにふさわしいキャラクターだ。
彼女とシャアの出会いは、一年戦争後のアクシズ。ここでのシャアとハマーンの関係は、北爪宏幸氏の漫画『機動戦士ガンダム C.D.A. 若き彗星の肖像』の中で描かれており、ハマーンが憧れを抱いていたのがシャアだ。一方、シャアはハマーンが持つニュータイプや指導者としての素養に期待していたが、一人の女性としては見ていなかった。
その後、ザビ家の末裔であるミネバの教育方針や、ジオン再興に対する政治的意見の対立を経て、シャアはハマーンのもとを去ることになる。
ハマーンの印象は厳格で苛烈。圧倒的なMSの操縦技術とカリスマ性でアクシズを率いた女傑だが、その実、孤独な女性としての一面も描かれている。その孤独を埋める存在としてシャアにひかれ、彼に認められたいと願った側面もあるだろう。
『Zガンダム』の中ではシャアと敵対しつつも、自分の元に戻ってくるように声をかける場面もあり、ハマーンの複雑な乙女心を感じることができた。
最終的にハマーンは『機動戦士ZZガンダム』の中でジュドーに討たれる。だが彼女は、ジュドーにシャアと似た気配を感じていたようで、最後までシャアに与えてもらえなかった心の拠り所としての部分に執着し、それをジュドーに求めていた節があった。