白泉社は6月7日、2021年5月に急逝した三浦建太郎さんの漫画『ベルセルク』の連載再開を発表した。監修を三浦氏の友人でもある漫画家の森恒二氏、作画をスタジオ我画がそれぞれ担当する。
『ベルセルク』は「大人のダークファンタジー」として海外からの評価も高い漫画。三浦さんが亡くなり未完のまま連載がストップしていた同作だが、森氏はツイッターを投稿し「自分がやれる事には限界がありますが三浦の弟子達と何とか走りきりたいと思います!どうかよろしくお願い致します」と意気込みを伝えた。
連載再開が発表された今、改めて同作を読み返して主人公ガッツのセリフに再び心を鼓舞された読者も多いはず。今回の記事では、あまたある名シーンから、三浦建太郎さんが遺したガッツの言葉をいくつか振り返りたい。
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記事では『ベルセルク』についてのネタバレを含んでいます。未読の方はご注意ください。
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■「祈るな!! 祈れば手が塞がる!!」…コミックス21巻より
まずは「断罪篇 生誕祭の章『闇の津波 2』」より。魔女の容疑で捕らえられたキャスカを救うため、ガッツは断罪の塔へと向かう。強敵モズグスを倒したものの、夜の闇を飲み込むよう悪霊のうねりが押し寄せ人々の命を奪っていく。夜が明けるまでガッツたちができる唯一の対抗策、それはたいまつの灯りのみであった。そんなとき、受け入れがたい光景にファルネーゼの手は救いを求め“祈る”よう組まれかけるが、その瞬間ガッツがこう言い放った。
「祈るな!! 祈れば手が塞がる!! てめえが握ってる“それ”は何だ!?」
ガッツの言葉を受け、生き残るための武器――たいまつをかざすファルネーゼ。誰もが何かにすがりつくことしかできない絶望的な状況であるはずなのに、「生き残るぞ!」というガッツの言葉が力強く彼女に響くのだった。
大貴族ヴァンディミアン家の子女であるファルネーゼは抑圧された幼少期により歪んでいった。ところがガッツとの出会いをきっかけに、暗闇の中ですくんでいた少女は変わっていく。ガッツに同行しあまたの怪異を経験することで自身の無力さを知るファルネーゼ。そんな彼女の変化は、幼い頃より見守り続けてきたセルピコさえもが驚くほどだった。
祈るよりも前にすること。『ベルセルク』の世界があまりにも過酷であることを認識させられるセリフのひとつだが、これほど力強い言葉が出てくる漫画もそう多くはない。三浦さんのセリフが読者の胸を打つのはこの力強さがあるからだろう。