■「逃げ出した先に 楽園なんてありゃしねえのさ」…コミックス16巻より

 続いては「断罪篇 ロスト・チルドレンの章『青空(そら)の妖精』」より、挫折しそうなときに思い出したいガッツの言葉。

 誘拐されかけた少女・ジルを救ったガッツは彼女の村に案内されるも、村人たちはなぜかエルフのパックに憎悪を向ける。“霧の谷”に住む妖精(エルフ)は畑や家畜を襲い人間さえ食べてしまうほど凶暴で、しかも村の子どもをさらっていたからだ。

 ところが、村を襲撃したエルフをガッツが討ち倒すと、死体は人間の子どもへと姿を変えてしまう。つまりは、村を襲っていたのはさらわれた子どもだったのだ。凄惨な光景を目にした村人に襲われかけたガッツは、ジルを人質に牽制しながら“霧の谷”を目指すことに。

 追いかけて来たジルに対しガッツは「コソコソ逃げ回っている様なガキ」と突き放す。悔しさと恥ずかしさで逃げ出すジルだったが、使徒となったロシーヌが仲間になれと誘う。大人の暴力になすすべもないジルは、怯えながら暮らさねばならない今の生活に心が揺れてしまう。

 だが、ロシーヌが作り出すエルフの真実を知ったジルは逃げ出し、間一髪でガッツに救われる。壮絶な戦いの末にロシーヌを倒すガッツだったが、ファルネーゼ率いる聖鉄鎖騎士団の出現で“霧の谷”を後にする。そんなガッツにジルは、自分をここでないどこかに連れて行って欲しいと願うのだ。

 するとガッツは、「逃げ出した先に 楽園なんてありゃしねえのさ」とつぶやくのだった。

 ガッツの戦場が悪霊がうごめく“闇”であるのに対して、ジルの戦場は彼女を取り巻くつらく厳しいながらも日の当たる“日常”なのだ。

 この「ロスト・チルドレンの章」では多くの無力な子どもたちが痛ましい目に遭わされている。そんな日常から逃げ出したいと願うジルだったが、ガッツとの出会いにより「泣いて叫んで噛み付いてみようと思う」と清々しい顔でパックに語った。無力な少女がガッツの言葉から“あらがう”勇気をもらったのだ。

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