90年代、『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて連載され、多くの少年少女たちを熱中させた井上雄彦氏のバスケマンガ『SLAM DUNK(スラムダンク)』。世代を超えて、たくさんの人々を魅了してきた名作中の名作だ。
不良少年の桜木花道がひょんなことからバスケ部に入部し、驚くべき成長を見せながら真のバスケットマンになっていくというストーリー。ドラマチックな物語はもちろん、高校バスケ部員たちを指導する監督たちの熱い言葉に感動した人も少なくないはずだ。
そこで今回は、大人になった今だからこそじわじわ胸に響く、監督たちによる珠玉の名言をご紹介したい。
■「『負けたことがある』というのがいつか大きな財産になる」
日本高校界の頂点に君臨する「山王工業」。そんな絶対王者を率いる名将・堂本五郎監督は、相手がどんなに無名だろうと研究と対策を怠らない人物。インターハイで湘北と対戦する際にも、予選からのビデオを用意して選手に見せたり、仮想・湘北として現在の大学オールスターOBを呼び寄せて練習試合をしたりと、万全の状態で試合に臨んだ。
とはいえ堂本監督は、本心では湘北に負けるなどみじんも思っていなかったのだろう。前半から日本屈指のセンター河田雅史の実弟で210センチ、130キロもあるビッグマン・河田美紀男を投入。キャリアの少ない美紀男に経験と自信をつけさせようと、余裕のある采配を見せた。
しかし、試合が進むにつれ、点差をつけても必死に食らいついてくる湘北の驚異の粘りと追い上げに堂本監督も焦りを見せはじめる。結果的に終了間際に放たれた花道のシュートが決まり、湘北にまさかの逆転負けを喫することとなる。
敗れた山王の選手たちが無言で控室に引き上げる通路で、堂本監督は「はいあがろう」「『負けたことがある』というのがいつか大きな財産になる」という言葉をかけた。
山王の選手だけでなく、監督である自分自身にも言い聞かせているようにも感じられたこのセリフ。大人になると自分の思い通りにいかず、悔しい思いをすることは誰にでもある。そんなときにこの言葉を思い出し、「この失敗した経験も財産なんだ」と前向きにさせてくれる素晴らしい言葉だと感じた。