■ネタバレあり『11』で再度問われた「真実とウソ」

 このアモスイベントを初めて見たのは小学生のころでしたが、今日にいたるまであのときの衝撃は忘れられません。

 そんな衝撃がずっと頭にこびりついている中、大人になってからプレイした『ドラクエ11』でまた同じような場面が現れました。そう、人魚ロミアと漁師キナイのお話です。ここからは現状の最新作である『ドラクエ11』のネタバレを含みます。未プレイの方はご注意ください。

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 人魚のロミアは人間の漁師キナイと結婚する約束をしていました。2人は固く愛を誓い合った仲だったのですが、キナイが迎えに来ないので心配だから様子を見てきてほしいとロミアに頼まれます。

 主人公はキナイが住むナギムナー村でキナイを探しますが、村では人魚を悪者のように扱っていました。人魚は人を騙して破滅させる恐ろしい存在だと。

 人魚の怖い伝説を聞きつつキナイを探しますが、実はロミアの愛した「キナイ・ユキ」はすでに亡くなっており、孫の「キナイ」は人魚とキナイ・ユキへの憎悪を口にしていました。人魚と人間では寿命が違いすぎること。そのことを失念していつまでも帰りを待っていたロミアにとって、キナイ・ユキの死はあまりにもつらい真実。

 主人公はロミアの待つ入り江に戻り、話しかけると、先ほどのアモスと同様に真実を告げるかどうかの選択肢が現れます。

 ここでの選択肢で私はアモスのときの気持ちをすぐに思い出しました。

「真実を告げることがすべてではない」。

 しかし、どうしてもロミアが不憫でなりませんでした。ウソをついて、「おお、キナイは元気だったよぉ~!」なんてどうしても言えませんでした。

 なによりこんなことになるなんて知らなかったので、当時セーブをしていませんでした。ここでリセットするようなことになれば、どこから再開になるのだろうか。

 悩んだ挙句、私は「はい」を押しました。

 その後の結末は、『ドラクエ11』でも屈指の名シーンですので、ご存じない方はここまで読んだうえでもぜひご自身の目でご確認ください。普通に泣いてしまいました。

 アモスイベントを通ってきたプレイヤーであれば誰しもがよぎったであろう、ウソの選択肢。

 アモスと違い、どちらを選んでもストーリー進行には特に影響はありませんが、あのイベントはわざとあのような仕様にしたんだろうと思います。『ドラクエ11』は行く先々でこれまでのシリーズ作品のBGMが出てくるなど、過去作からの流用が多数みられるので、おそらくこの人魚イベントもアモスのあの選択肢をオマージュしたのでしょう。

 だからこそ「これまでの集大成感」を感じて『ドラクエ11』でドラクエは終わるのだと考えていたのですが、見当違いでした。次作『ドラゴンクエスト12 選ばれし運命の炎』では主人公が「悪」らしいので、こういった「正義」を問うような選択肢も多く出てくることでしょう。

 一体、どんなストーリー展開になるのか。今から楽しみですね。

■あなたは真実を伝えましたか?

 ということで今回は、ドラクエの「正義」について考えさせられる「真実を伝えるか否かイベント」について紹介させていただきました。

 みなさんは当時どちらを選んだでしょうか。

 ちなみに『ドラクエ11』では、アモス同様に魔物になってしまって人を襲うようになった人物が出てきます。アモスを彷彿とさせるようなイベントが2つもあるのに、『6』ではモブの戦士グラフィックのおまけキャラ扱いなので、『6』以外の作品でアモスは全く出てきません。

 ほかのキャラクターは、モンスターズやらヒーローズやらで出番がたくさんあるのに……。

 ドラクエ36周年を迎えた今年、昨年発表された新作の情報が更新されることを祈りましょう。そして、もの好きな人は、アモスの再登場を祈りましょう。ちなみに私は、ここまで書いておきながらどうせ再登場してくれるならバーバラがいいです。

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