■友をバカにされ、奮闘するも国際戦で2連敗

 続いて紹介するのは原作・ほったゆみ氏、作画・小畑健氏による囲碁漫画『ヒカルの碁』の最後に描かれた北斗杯。最終回が敗北エンドという珍しい展開を迎えた作品だ。

 平安時代の囲碁棋士・藤原佐為の霊が取り憑いたことで、主人公・進藤ヒカルが囲碁の才能を開花させていくという物語。最初は小学生だったヒカルだが、佐為との涙の別れを経験した後に一人で頼もしく成長していき、プロ棋士として海外選手を相手に戦っていく。

 最終盤で描かれた北斗杯は、18歳以下が出場する団体戦で、日本・中国・韓国の3国が戦う国際戦だ。試合前のレセプションパーティで、韓国代表の1人である高永夏(コ ヨンハ)が江戸時代の棋士・本因坊秀策(ほんいんぼう しゅうさく)をバカにして、ヒカルを挑発する(ただし、実際のところ永夏は秀策を評価しており、バカにしたのは本心ではない)。

 実は江戸時代の本因坊秀策には佐為が取り憑いていたというのが同作の設定で、秀策が残した棋譜は佐為が打ったものだった。ヒカルはそれを知っていたため、佐為の囲碁がバカにされたように感じ激怒したのだった。

 なんとか勝ちにこだわったヒカルだったが、怒りと経験不足が災いし、中国の副将・王世振(ワン シチェン)戦では自らペースを乱して敗北。続く韓国戦では大将として格上の永夏と戦ったものの、半目差で敗北してしまった。

 主人公が2連敗をして最終回を迎えた同作。だがこの負けの試合にヒカルの成長といなくなった佐為との絆がたっぷりと詰め込まれていたのが『ヒカルの碁』のすごさだろう。コミックスでは全23巻の15巻で佐為が消え、そこから一人で囲碁と向き合ってきたヒカル。最後は何とか勝ってほしいところだったが佐為の面影を追い続けていたヒカルが、はっきりと囲碁を打つ意味を見つけた大会でもあった。ここから先のヒカルの物語を見たくなる、余韻を残す負け試合だった。

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