■勝利への反撃!しかし体調不良で無念の退場
最後に紹介するのは古舘春一氏によるバレーボール漫画『ハイキュー!!』の烏野高校と鴎台高校の試合。
高校バレーの大舞台である通称・春高バレーで、主人公・日向翔陽の烏野高校と鴎台高校がぶつかり合う。鴎台高校には、日向と同じく小柄ながら高い身体能力で戦う星海光来がいた。この戦いは、本作のキーワードである「小さな巨人」同士の戦いで、日向と星海の熱い戦いが描かれる。試合の最中、日向は「小さな巨人」よりもチームメイトから与えられた「最強の囮」の称号に誇りを持ち始める。
しかし「反撃はこれから」というときに、日向は前日までの無理がたたって、倒れてしまった。その後、試合に復帰できず、チームは敗北してしまう。
日向は小学生のころに、当時の「小さな巨人」を見てバレーを始めた。現在の「小さな巨人」である星海との対決を心から楽しみにしており、かける情熱は人一倍。その情熱が裏目に出てしまい、持ち前の運動量と相まって、監督やチームメイト、日向自身でさえ体調不良に気がつかなかったのだ。
どうしても出場しようとする日向を監督の武田一鉄がなだめるシーンは、同作の屈指の名シーンではないだろうか。武田の言葉に反抗する日向の表情、武田の言葉に納得して悔し涙を流す日向。今までどんな苦難でも全力でがんばってきた日向の本気の涙は、多くの読者の涙を誘ったに違いない。
勝者がいれば敗者がいる。一生懸命努力したキャラたちが負けてしまう姿は悲しくもあるが、その後の成長こそ少年漫画の醍醐味だろう。敗北をバネに成長する少年漫画の展開は、いつになっても読者の心を熱くさせる。たまには、選手たちの敗北する姿に思いを馳せるのもいいのではないだろうか。