1990年から1994年にかけて『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載された冨樫義博氏による漫画『幽☆遊☆白書』。約30年前の作品ながら、今なお根強い人気を誇る作品で、2023年12月からはNetflix配信で実写ドラマ化も決定しており、どのような映像になるか期待が寄せられている。
主人公・浦飯幽助を中心に、人間界と異界とをまたいだ熱いバトルが描かれる同作だが、脇を固める個性的なキャラクターが多数登場するのも魅力のひとつ。そこで今回は公式で行われた読者投票企画で主人公を抜いて連続して首位に輝くほどの人気だった、飛影に注目したい。
飛影は冷酷無比ではあるものの、意外な熱い顔も持っており、幽助と行動をともにするようになってからは仲間思いな性格が目立つようになったキャラだった。魔金太郎戦での「残像だ」や、邪王炎殺黒龍波を初披露した際の「もう後戻りはできんぞ 巻き方を忘れちまったからな」のような少年心をくすぐる冨樫節の名セリフがある一方、思わずうるっとしてしまうようなキザで感動的なセリフを吐くことも多かった飛影。そこで今回は2023年のドラマ化を前に、飛影の甘い名シーンをいくつか振り返ってみたい。
■妹・雪菜を救出し、正体について問われる
まず最初に紹介するのは、生き別れた妹・雪菜との再会のシーンから、身分を隠したまま雪菜を救出したときの飛影のセリフ。もともと雪菜の救出はコエンマから幽助に依頼されていたもので、単独行動をしていた飛影は現地で居合わせた形だ。幽助と桑原が戸愚呂兄弟をなんとか撃退したところ、飛影は長年に渡って雪菜を監禁していた宝石商・垂金権造から彼女を救出することに成功した。
そこで雪菜が飛影に向かって「あの…あなたは…?」と問いかけた際のセリフが次のものだ。
「…」
「…仲間さ。あいつらのな…」
雪菜は自身に兄がいることは知っていたが、顔も名前も知らなかったため、飛影が兄とは分からない。のちに判明するが、一方の飛影も自身が兄であることを告げてはならない約束を時雨としている(本人は最初から告げるつもりはない、と話している)。
雪菜を探し出すために妖力をD級妖怪まで落として第三の眼「邪眼」の手術をし、数年かけてようやく妹と再会できた飛影。結局この場面では、幽助と桑原の仲間だと言って雪菜に正体を明かすことはなかったが、「兄だ」と言う代わりにポロッと呟いた「仲間さ。あいつらのな」というセリフ。ここに、嘘ではなくまんざらでもない彼の思いがあるようで、わずか数コマながら安心したような飛影の表情に感動してしまう。
飛影が初登場したときは、仲間である剛鬼が死んでも感情を動かさない冷血漢だったが、妹のために行動するやさしさが垣間見えた瞬間だった。