■知る人ぞ知る傑作RPG『エストポリス伝記II』
羽生選手がもうひとつの“原点”として挙げたのが、やはりスーパーファミコン用ソフトの『エストポリス伝記II』。こちらは1995年2月にタイトーが発売したRPGです。
戦う宿命を背負った主人公・マキシムが世界中を冒険し、世界滅亡の危機に立ち向かっていくというストーリー。モンスターを倒して成長するオーソドックスすぎるスタイルのRPGで、『エストポリス伝説』なんて間違われることもしばしば……。
しかし、シンプルながらも直感的で使いやすい戦闘システムや、仲間にしたモンスターを参加させられるバトルシステムは秀逸。特殊なアイテムを使ってパズル的に解いていくダンジョンなど、プレイしていて手応えを実感できるシステムが満載でした。
また、持ちこめるアイテムに制限がある『不思議のダンジョン』タイプのダンジョン「いにしえの洞窟」や、パチスロやブラックジャックといったミニゲームが楽しめるカジノといった要素も。いろんなゲームでおなじみの人気要素がふんだんに詰めこまれながら、しっかり高水準にまとまった傑作RPGです。それに加えてサウンドの出来もかなり良く、中でもバトル曲は多くのファンから愛されています。
それなのに、なぜメジャーなタイトルになれなかったのか不思議に感じるかもしれません。あくまでプレイした上での個人的な意見ですが、いろんな部分が平均以上のレベルでまとまっているがゆえに、良くも悪くもとがった部分がなかったからと考えています。
遊んでみればすごく面白いゲームなのですが、実は前作の前日談なんだとストーリーの良さをネタバレしてまで薦めるわけにもいかず、完成されたシステム面も遊んでみて初めて理解できる部分なので、言葉で伝えきれずにもどかしかった覚えがあります。
なお、『エストポリス伝記』シリーズの発売元はタイトーですが、開発はネバーランドカンパニーが担当。これはマニア受けする傑作『カオスシード ~風水回廊記~』を作ったメーカーでもあります。
『エストポリス伝記』や『カオスシード』のどちらも、パッと見のキャッチーさは弱いものの、遊んでみるとその面白さが分かるという共通点が。ある意味、このメーカーの特色なのかもしれませんね。
ちなみに『エストポリス伝記』シリーズは3部作の予定で、『エストポリス伝記III』の発売も発表されていたのですが、販売会社の倒産などもあって立ち消えに。開発のネバーランドカンパニーもなくなってしまったので、残念ながら発売は絶望的。何かの拍子に復活して『III』が発売されることにならないでしょうか……。