■マニア心をくすぐる要素も!

 マニアックな楽しみ方ができる作品は人気が出るもの。そんな『BASTARD!!』のもう1つの人気要素として、パロディの多さも語っておかなければなりません。

 作者の萩原氏がハードロックやヘヴィメタル好きということもあって、作中の固有名詞にはこれらをもじった名称が多数登場します。物語序盤の舞台「メタ=リカーナ王国」からして、アメリカのヘヴィメタルバンド「メタリカ」をほうふつとさせます。

 パロディ要素に関してはこれだけにとどまらず、他の漫画、アニメ、特撮、映画、ゲームなど、その元ネタは多岐にわたります。

 こうした元ネタに気づいた読者が「このネタを分かる俺(私)って通かも?」というちょっとした精神的優越感に浸ると同時に、作品への興味を引かせるきっかけにもつながります。単に作者が描きたかったものを描いただけかもしれませんが、『BASTARD!!』という作品の魅力の一つと言えるでしょう。

 作者の描きたいものといえば、作中、長文で設定を語る「う・ん・ち・く」と書かれたコマにも注目です。ジャンプの読者層にあまりなじみのないモンスターや設定を長々と解説してくれるのですが、通常コミックではこうした長い説明文はあまり好まれません。

 しかし『週刊少年ジャンプ』では、当時『魁!!男塾』の“民明書房シリーズ”の解説文などが好評を博しており、読者側に長文解説を受け入れる土壌があったのかもしれませんね。

『BASTARD!!』では、こうした「う・ん・ち・く」なども活用して、たとえば「アンデッドとは何か」など、モンスターの背景設定を含めたファンタジー知識を読者に浸透させていくことに成功しています。

ファイナルファンタジー』シリーズなど、コンピュータゲームで聞きかじったファンタジー用語を『BASTARD!!』の中で「あーそういうことね。完全に把握した」という方も多いのではないでしょうか。

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