■死人も蘇る『魁!!男塾』では腕もすぐ生える
『北斗の拳』のケースは作者だけでなく、チェックする編集者も気づかなかったうっかりミスだが、中には読者全員が気づきそうな作画ミスもある。それの代表格が、宮下あきら氏の『魁!!男塾』。
途中からジャンプ漫画にありがちな格闘路線に移っていった同作だが、もともと破天荒すぎるギャグ路線を走っていただけにさまざまなご都合主義が頻発し、極めつきは天挑五輪大武會という武術トーナメントでのことだった。
男塾の三号生・羅刹と、梁山泊十六傑・山艶との対決。羅刹は、自ら切断した左腕を一本犠牲にすることでようやく勝利をつかんだが、拳法家にとって片腕を失ったのは致命的。指拳で相手を刺突する羅刹にとってはなおさらだ。「腕一本……!! 勝利のためなら惜しくはない……!!」という名言を残した山艶とのこのバトル。渋いおっさんヒゲが好きなキャラだっただけに、ここが最後の見せ場になったかと残念に思ったが、たいして間の空かないその後の藤堂兵衛に塾生たちが立ち向かうシーンでは、羅刹の左腕がいつの間にか生えていた。
読者総ツッコミだったのは間違いないシーンだが、これは確信犯ではないだろうか。生身と見分けがつかない義手だとか、怪しい秘術でつなげたのだとかいう説も流れたが、体のど真ん中を派手に貫かれた男(藤堂豪毅)だって生きていたのだ。腕の1本ぐらい勝手に治っていてもおかしいことは何もない。それがこの漫画のルールであり、単行本でもやっぱり羅刹の左腕は元通りになっていた。