■大流行したパーティ育成のテクニック

 そんな手ごわすぎる『FF2』だからこそ、光明とも言える育成テクニックの存在を知り、それにすがったのです。その1つが「パーティアタック」を活用したHP強化方法でした。

『FF2』の取扱説明書を見てみると「たいりょく」の欄に、「HPの減った量に応じて上がります」と記載。つまり戦闘開始から終了までに減ったHPの量によって体力が上がり、どんな手段でHPを減らしてもOKということになります。この仕様を逆手に取り、「パーティアタック」で味方キャラを死なない程度に痛めつけ、わざとHPを減らして最大HPを効率よく増やすというテクニックでした。

 まるで『ドラゴンボール』の主人公・孫悟空がナメック星に向かう宇宙船内で自分の体を痛めつけ、死の淵からよみがえるたびに強くなるサイヤ人のような育成方法です(発売当時はここまで連載は進んでいませんが)。

 このパーティアタック育成を活用すれば、HPを4桁どころか5桁(数字はバグりますが…)まで増やすことも可能。それ以外にも戦闘コマンドをいったんキャンセルして再度コマンドを入力するのを繰り返すことで熟練度を上げる裏技もあって、ゲーム本来の想定とは違う、なんとなくイリーガルな雰囲気が漂う手段で成長させていく工程は楽しすぎました。もともとチマチマしたレベル上げ的な作業が大好きだったんです。

自キャラに自分でダメージを与えてHPを育てる! この作業がけっこう楽しい

■HPを上げすぎたことで起こる悲劇

 しかし、このパーティアタック育成には、実はいくつも落とし穴がありました。まず「減ったHPを回復するのが大変」というリスクです。ファミコンの『FF2』では宿屋に泊まればHPとMPを全快できますが、減少しているHPやMP量によって宿泊代金が変動するシステムでした。

 いくら数千、数万のHPがあったとしても「HPの○%を減少」といった“割合ダメージ”を食らう攻撃でとんでもない大ダメージを受けるため、宿屋で回復しようとすると莫大なお金(ぎる)が吹っ飛びます。アイテムの「コテージ」を購入して使ったほうがお得というケースすらありました。

 また、物語の序盤は良かったんですが、即死攻撃やマヒなどの全滅しかねない攻撃を行ってくる敵が出現するようになると、いくらHPが多くても無意味ということにイヤでも気づかされます。

一番イヤな即死攻撃の使い手といえば、ひげの長い猫のようなモンスター「クアール」

 結局のところ『FF2』では、そういう危険な攻撃をかわすための「回避率」や「魔法防御」といったステータスこそ最重要。もちろん当時はそんなことが分かるはずもなく、キャラクターのHPが高くなりすぎると弱い敵が逃げてしまい、他のステータスを上げるのも至難の業……という悪循環に陥ったのです。

『FF2』の攻略のコツを把握している知人からは「普通に攻略するのが一番良かったんだよ」と言われましたが、この“普通に攻略”というのが正直難しい……。

 たとえば『ドラクエ』だったら次の目的地までの大体の目標レベルがあって、そのレベルに達していれば、周囲のフィールドにいる敵は難なく倒せます。もしくは「周辺の敵を楽に倒せるようになったら次の目的地に行こう」などと判断ができます。これが当時の私にとって“普通のRPG”の進め方でした。

 しかし『FF2』にはレベルの概念がありません。それに最初の街の近くにすらとんでもなく強いザコ敵が出現するので、「次の目的地に行くには、これを倒せるくらいの強さが必要なのか?」と本気で悩むことになります。『FF2』には「他のRPGのような進め方が通用しない?」という、漠然とした不安みたいなものを感じました。

 それだけに「パーティアタック」によるHP育成の方法を知ったときは、これこそ“正解”に違いないと飛びついたのです。実際、あの頃「パーティアタック」でHPを増やしまくった人は相当多かったと思います。

  1. 1
  2. 2
  3. 3