■外道に与えたのは終わらない最期

 続いては仙水編で飛び出した蔵馬の名ゼリフ。霊界探偵の先代にあたる仙水忍は、魔界の扉を開こうと計画していた。魔界の扉が開けば、魔界と人間界の境界がなくなり大混乱に陥るのは必至。仙水の計画を阻止すべく、幽助たちは行動していた。

 ここで幽助たちの目の前に立ちはだかったのが、暗黒武術会で弟に撲殺され木っ端みじんとなって死んだはずの戸愚呂・兄だった。戸愚呂・兄は幽助たちに復讐をしたいという一心で肉体を完全に蘇らせており、戦闘開始直後に蔵馬の腹を突き破るという衝撃の攻撃をするが、血まみれになった蔵馬が言い放ったのが次のセリフだった。

「今 何かしたか?」

 戸愚呂・兄は何度も攻撃をしかけるが、蔵馬は平然。それもそのはず、戸愚呂・兄が攻撃していたのは蔵馬の幻。蔵馬は戸愚呂・兄が攻撃するよりも早く魔界植物「邪念樹」を召喚していた。邪念樹は捕らえた対象に幻を見せ、養分を死ぬまで吸収するという寄生植物だが、戸愚呂・兄は再生能力が非常に高く死ぬことはないため、永遠に養分を吸われ続けることとなる。

 邪念樹に全身の養分を吸われながら、「くそォォなぜだァア なぜくたばらねぇ」と幻の中で蔵馬を攻撃し続ける戸愚呂・兄。そんな彼を見て、蔵馬は「お前は“死”にすら値しない」と冷酷に言い残し去っていった。戸愚呂・兄は弟からも見捨てられるほどの外道な男だが、死さえも許さない蔵馬の攻撃はジャンプキャラ屈指のドSさだ。

 その他「お前は殺すぞ」などストレートに冷徹なセリフもある一方で、「もちろん企業秘密です」や「四人のうち誰が欠けても嫌だ」などといった甘い名セリフも多い蔵馬。「強いのに儚い」「美しいのに冷酷」。そんな二面性こそ蔵馬の最大の魅力だろう。

  1. 1
  2. 2
  3. 3