■主人公はすごい!のに、なんだか地味…

 まず、大ネタバレになってしまいますが、ドラクエ8の主人公は竜神族の血を引く人間です。

 両親もいない謎の青年だった主人公は、ある日トロデーン城を訪れ、そこで兵士として雇われます。同い年のミーティア姫とはすぐに打ち解け、2人でいろんなところに遊びに行った思い出がたくさんあるようです。この辺は、根気強く不思議な泉でのイベントに通えば確認することができます。

 そんな主人公が仕えるトロデーン城にある日、ドルマゲスがやってきて、城内に呪いをかけます。城にいた人々はイバラに姿を変え動かなくなり、トロデ王は魔物に、そしてミーティア姫は馬に変えられてしまいました。

 しかし、このとき城内で突っ立っていた主人公にはなぜか呪いが効きません。なぜ呪いを受けなかったのか分からぬまま、王と姫、ならびにトロデーン城の人々を救うために、ドルマゲスを追って旅に出た、というのがゲーム開始前の情報です。

 そして、最初のボス・ザバンの呪い攻撃も無効化してしまうことから、プレイヤーは「なんだこの主人公補正は……!?」「きっと何か大事な理由が……!?」とめちゃくちゃ気になるはず。ですが、めちゃくちゃ気になっているにもかかわらず、結局「なぜ呪いがはじけるのか」という理由はクリア後のイベントをこなすまで明かされませんでした。

 つまり、ストーリークリアだけしてやり込まない人にとっては、意味の分からない伏線のまま終わってしまうのです。

 なぜ呪いがはじけるのかという理由ですが、竜神族の女性と人間界の男性(サザンビーク王クラビウスのお兄さんにあたる人物)の間に生まれた主人公でしたが、生まれてすぐに両親が引き離され、不幸にも2人とも死んでしまいます。

 その後、竜神族の中で会議を行った結果、人間界に追放されることになった主人公は、竜神族の里での記憶を封印される呪いをかけられてしまったのです。その呪いが強すぎるあまり、他の呪いがはじかれてしまう、というのが理由でした。

 理由があまりにも切ないうえに、かなりドラマチックなにおいもするストーリー。ですが、何度も言うようにクリアした後のやりこみイベントをプレイしない限り、知ることはできません。かわいそうな主人公……!

 ちなみに主人公は、ミーティアに「竜にボコボコにされる怖い夢を見た(意訳)」とこぼしたこともあるそうです。これはもしかすると、竜神族を追放されるときに味わった苦い記憶なのでは、という見方もできますが、これも不思議な泉にたくさん通わないと聞けない話です。

 こういった普通にプレイしていると見逃してしまう設定の数々。ドラクエ8の主人公が地味な印象を与えがちなのは、こういったエピソードが根気強く探さないと出てこないからなのではないかと思っています。

 また、主人公が地味な理由として、ほかのキャラに比べて感情が薄いというのもあります。

 もちろんドラクエなので、主人公は基本的に「はい・いいえ」でしか感情を表現できません。ですが、今作ではトロデやククールなどなど、ほかのキャラクターが感情豊かで、いろんな表情を見せてくれるのが実に楽しい。それと比べてしまうと、主人公はやはり地味です。

 またドルマゲス戦後の話が長すぎて、「あれ、そもそもなんで俺ラプソーンと戦ってるんだ……!?」と、目的が迷子になることも。そのラプソーンを倒したというのに、ヒーロー!英雄!みたいに称えられることもありません。これは初めてクリアしたとき、私が一番ポカンとしたことでした。勇者として誰にも称えられず、なんだかフワッと終わるラストシーン。どちらかというとレティスの「私はラーミア」発言に気持ちを持っていかれたように思います。なんて地味なんだ……。

 でも、彼はきっとそれで良いのでしょう。襲ってきた盗賊ヤンガスの命を迷わず助けた心優しい青年です。ミーティア姫とチャゴスの結婚式をぶち壊すことができれば、それでハッピーエンドなのです。

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