■“ドーピング”扱いされた反則技も!?

 人力での記録挑戦に限界を感じたとき、何か別の力に頼りたくなってしまうのはやむをえないことなのかもしれない……。『ハイパーオリンピック』の世界でも、そうした禁断の技が編み出されることになる。

すべての競技において連打力は必須だった

 まず1つ目は「定規」を使った連打方法だ。ボタンに当たるよう定規を設置し、その一方を固定。そして定規を「ベンベン」と弾くと、定規の弾性が生み出す振動によってボタンが高速連打できるというしくみだ。

 さらにどんな定規がもっとも連打に適しているのかは使用者によって好みが分かれ、プラスチック製や金属製などの材質、どのくらいの長さが良いのかなど、熱い議論が交わされることもあった。ちなみに最良の組み合わせを見つけたら、世界新記録をはるかに上回るレコードを出すことも簡単だった。

 そして2つ目は「こすり連打」の発展系として、自分の爪や指ではなく「ガシャポンカプセル」や「10円玉」などの道具を使ってこするという方法。これなら自分の指や爪を痛める心配はなく、心おきなくボタンをこすりまくれる。

 こちらも人力では不可能なタイムを叩き出すことも可能だったが、あまりに激しく摩擦しすぎてコントローラーのボタンが壊れる事態も続出。友人の借り物を破壊してケンカになることもあった。しかも操作音がガチャガチャと非常にやかましく、家族から怒られることも珍しくなかった。

 これらの手段は“自力”と呼ぶには少々道具に頼りすぎで、スポーツにおける「ドーピング」と同じような反則扱いをされることもしばしば。友だちとのガチな対戦プレイで使用すると、露骨に嫌がられることも多々あった。

 それでも「ゲーム上の限界記録に挑戦する」という意味で、タイムを詰めるための試行錯誤が面白かったのは事実。現在ではプログラムを解析することで、理論上出せる最高記録というものが判明しているが、当時はそんなの関係なしに誰がどれだけ速いタイムが出せるかに夢中になったものだ。

 五輪が終わった寂しさをまぎらわせるのに、あらためて『ハイパーオリンピック』に没頭してみるのも面白いのかもしれない。

  1. 1
  2. 2
全ての写真を見る