■『生きる物全てに春は来る。希望を持つことだ』

 自身と同じくネイキッド・スネークのクローンであり、双子の兄弟でもあるリキッド・スネークとの戦いに決着をつけたソリッド・スネークは、メリルとともに脱出用のスノーモービルに乗り込む。朝日を浴びるアラスカを歩くカリブー(トナカイ)たちを見て、スネークは上記のセリフを言った。

 スネークの行く先々で変死する人たち、スネークを無線越しにサポートする人物たちのあいだでうごめく陰謀など、物語を進めるうえで気になる伏線はきれいに回収されていき、最後には氷原いっぱいの朝日が待っている。季節としての春だけでなく、スネーク自身や、メリル、オタコンといった、登場人物たち全ての長く苦しい闘いを労い、讃えるような意味も読み取れた。

 本作にある2種類のエンディングのうち、メリルが生還した場合のみ、このセリフを聞くことができる。エンディング分岐の条件は、敵部隊のオセロットによる拷問に耐えられたかどうかで、耐えきるとメリルは生存し、投降すると死亡する。

 このときのスネークは独房にとらわれており、プレイヤーは自力で脱出手段を考えなくてはならない。オタコンにもらったケチャップを使って死んだふりをする、看守の目を盗んでベッドの下に隠れ、脱獄したように見せかけるなど、方法はいろいろあった。

 独房から脱出しない限り、一定間隔で続く拷問で、プレイヤーはひたすら〇ボタンを連打して耐えねばならない。疲れ果て、セレクトボタンを押して降参した人も多かったのではないだろうか。

 メリルが生きていた場合のエンディングでは、装備しているあいだ武器の弾薬が無限になる“無限バンダナ”が、死亡している場合のエンディングではオタコンが代わりに登場し、装備中は透明になって敵に発見されなくなる“ステルス迷彩”がそれぞれ手に入る。『メタルギア』シリーズおなじみの隠しアイテムであり、装備するだけで攻略が格段にラクになった。

 ちなみに2011年に東日本大震災が起こったとき、小島監督は当時所属していたコナミの特設サイトで「生きる物全てに春は来る。希望を持つことだ」のセリフを引用。苦境にあった人々を励ました。

 また、そのほかにも小島監督はSNSで何度かこのスネークの名言を引用しており、監督自身にも思い入れが深いセリフなのかもしれない。

 25年以上続いた『メタルギア』シリーズは、世界で5600万本以上を売り上げたビッグタイトルであり、最終作の「メタルギアソリッドV ファントムペイン」が発売されてから6年近くがたった現在でも、続編を世界中から熱望されている。

 今回取り上げた『メタルギアソリッド』は、プレイステーションだけでなく、ダウンロード版であればプレイステーション3やプレイステーション・ポータブル、プレイステーションVitaでも遊ぶことができる。ぜひ一度プレイして、スネークの素晴らしい言葉に触れてみてほしい。

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