■『他人の人生に興味を持った事は無い』

 読心能力とサイコキネシスを持つ強敵、サイコ・マンティスとの戦いを終えた後、奥に進もうとした際に「好きな人は?」とメリルに聞かれ、スネークはこう答えた。直前には本当の名前や年齢、家族についても問われるも、全てはぐらかしてしまう。厭世的で皮肉好きなスネークだが、この後「他人の人生に介入すれば、自分を守れなくなる」と続けており、独りを好む性格は、誰かとかかわることに対する恐怖や不安の裏返しとも考えられる。

 ちなみにこのセリフは、後のシリーズ作品『メタルギアソリッド3 スネークイーター』にも登場。主人公のネイキッド・スネークが、「人を好きになったことはある?」と聞かれた際にまったく同じ言葉を返した。ソリッド・スネークは、ネイキッド・スネークの体細胞から生み出された、いわゆるクローン人間。人体実験によって製造された兵器であり、事実上の父であるネイキッド・スネークとは過去作で激しく対立した。確執はあっても同じ返事をするところは、父と子の断ち切れぬ縁を感じる。

 英雄であるスネークの思想や哲学を通じ、メリルや後のシリーズでスネークの相棒となるハル・エメリッヒ博士(通称、オタコン)らは大きく成長していくが、一方で彼らとの出会いもまた、スネークの内面に大きな影響を及ぼしていく。

 多くのプレイヤーにとって、スネークは憧れや羨望の対象であったのは間違いないが、そんな彼もまた誰かによって成長する、等身大の描かれ方も特徴だった。

■『涙は既に涸れている』

 女狙撃手のスナイパー・ウルフを倒し、死にゆく彼女の頼みで、スネークは拳銃で介錯を務める。そして以前に手に入れたウルフのハンカチを本人の顔にかぶせ、「俺にハンカチは必要ない」と言う。彼女の最期に立ち会っていたオタコンがその理由を聞くと、スネークは「涙は既に涸れている」と答えた。

『メタルギア1』のアウターヘブン蜂起、『メタルギア2』のザンジバーランド騒乱というふたつの大事件を経たスネークだからこそ重みを感じるセリフ。第1作目で父である“ビッグボス”(ネイキッド・スネーク)と戦い、続く第2作目では彼に加えて戦友のグレイ・フォックスとも殺し合った。作中で描写されていないだけで、自身の過去や宿命を振り返って涙を流す日があったのかもしれない。

 生前のウルフと親交があったオタコンは、このシーンで一度は泣き崩れるも決意を新たに立ち上がり、スネークと共に戦い続けることを決める。スナイパー・ウルフ自体がシリーズ屈指の人気キャラクターであり、さらに「涙は既に涸れている」というセリフのかっこよさ、その後の「スネークはなんのために生きているのか」という問いに対する「生きて会えたら答えを教えてやる」という言葉も有名で、一連の話は『メタルギアソリッド』の中でもとくに人気が高い。

 余談だが、このスナイパー・ウルフとの戦いが終わって奥に進むとディスクチェンジを求められる。『メタルギアソリッド』は、今ではほぼ見られないディスク2枚組であり、ここからディスクを“壱”から“弐”へ切り替えると、次のステージに進むことができた。

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