55年前、お茶の間に初めてウルトラマンがお披露目されたのと同じ7月10日、満を持してシリーズ最新作『ウルトラマントリガー NEW GENELATION TIGA』第1話が放送となった。
同作は、副題からも分かる通り、今年放送25周年を迎える『ウルトラマンティガ』を強く意識した“令和版ティガ”と称されるウルトラマン。デザインや各タイプ、技、用語の類似性、ティガと同じ構図でCGの文字が飛び回り「ウルトラマントリガー!」と子どもの声が響くタイトルコールに、「ウルトラマン」の歌詞がないオープニングテーマ……などなど、盛り込まれた『ティガ』の要素を挙げれば、キリがない。主人公の名前も、ティガの主人公「マドカ・ダイゴ」と今作の主人公「マナカ・ケンゴ」で、響きがそっくりだ。
しかし、いざ放送を見ると、いい意味で『ティガ』と『トリガー』とはまったくの別作品だと思えた。まず、主人公のキャラが別物なのだ。ケンゴには「スマイルスマイル!」という口癖があり、植物を愛する姿、母親に対してのちょっと幼い態度など、分かりやすいキャラづけがされているが、ダイゴにはそういったものがなかった。
「人並みに悩む等身大の若者」を描くことに成功していたダイゴではあるものの、実は極端にハッキリとした個性があるわけではなく、チーム所属のキッカケ以外は生い立ちやバックボーンは深堀りされなかった。後のシリーズの主人公に比べ、分かりやすい決めセリフなども用意されていなかった。
そんな下手をすれば没個性的なダイゴだが、アイドル・V6の長野博が演じたことで、存在感のある、放送後も長く愛される唯一無二の「生きた」キャラになった。
今回、ケンゴを演じる寺坂頼我(てらさからいが)は、男性アイドルグループ「BOYS AND MEN(ボイメン)」の弟分グループ「祭nine.」のメンバー。ティガと同じく、新世代のアイドルが主人公を務めることになったが、これについて坂本監督は7月10日に『シネマトゥデイ』の公式YouTubeチャンネルで、多くのキャストをオーディションしたうえでの偶然と明かし、「彼がアイドルグループだったのは本当に運命のイタズラというか。“すごいじゃん!”ってビックリしました」「彼しかいないって思えるぐらい、彼の明るさとか笑顔は、すごく惹かれるものがありました」としていた。
第1話を見た印象では、ケンゴは未熟な部分を持つキャラクターで、これが何よりの魅力だ。寺坂頼我による表情や声質、口調でもケンゴのキャラが強調されていて、これからケンゴが人間的に大きく成長していく展開が予想される。最初から完成されているヒーローではなく、視聴者が成長する様子を楽しむことができるヒーローなのだ。
これはアイドルの成長を応援するファンの視点と近しいのではないだろうか。実際にケンゴのキャラと、ふだんの寺坂頼我はかなり似ている部分があるようで、7月3日に公開された『シネマトゥデイ』でのインタビューによるとファンから「当て書きじゃない?」と指摘されたこともあるのだとか。
“令和版ティガ”では、ケンゴの成長だけでなく、俳優・寺坂頼我の成長を追う楽しみもありそうだ。