■ハサウェイの背負った重い十字架
よりにもよって、最後までハサウェイの身を案じていたチェーン・アギを撃ち殺したことは、視聴者の誰もが許せなかった点だろう。私自身も劇場で見たときにそう感じた。
この一件でハサウェイの好感度は地に落ち、映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の製作が発表されたときも「あのハサウェイが主人公の映画ねぇ……」と釈然としない声があったのも事実。
しかし『逆襲のシャア』のとき、ハサウェイはまだ13歳の少年だ。しかも敵軍に身を投じたとはいえ、目の前で初恋の少女が殺されている。それも自分を守るような言動を残して。そのあたりも考慮すると、まだ幼い部分のあるハサウェイが錯乱して衝動的に撃ってしまったことに情状酌量の余地はないだろうか……。
また、ハサウェイは最後までクェスと言葉を通じて分かり合おうとしており、クェスがチェーンの乗るリ・ガズィを攻撃したときも、たしなめる言葉をクェスにかけている。
戦争の敵・味方として冷静な判断を下したチェーンと、クェスを助けることだけを目的に行動したハサウェイ。そこに若さゆえの激情が加わったことで、このような悲劇が生まれてしまったのだろう。
ハサウェイは、チェーンを殺す前に「やっちゃいけなかったんだよ、こんなことを分からないから大人って、地球だって平気で消せるんだ」という言葉をぶつけている。このようにチェーンのことを“大人って”と語ったハサウェイも、『閃光のハサウェイ』では25歳の“大人”になっている。
『逆襲のシャア』で大きな十字架を背負ったハサウェイが、映画『閃光のハサウェイ』でどんな大人に成長し、どのような行動を見せてくれるのか。あらためて『逆襲のシャア』を見直して、5月21日の劇場公開に備えたいと思う。