■ストーリーを際立たせる愛すべきキャラクターたち
『大神』のことを語る上で、やはり世界観やBGMといった要素はかかせませんが、本作のキャラクターたちが愛嬌にあふれまくっているということもポイントです。もうかわいくってしかたがありません。
まず、主人公のアマテラスは「大神」と言っていますが、完全に「ワンコ」です。特にしゃべったりはせず、小首をかしげるなど多少の感情表現を表情や行動で見せてくれるので、もうまさに犬です。
主人公がしゃべらない代わりに、相棒の「イッスン」はめちゃくちゃしゃべります。イッスンは江戸っ子口調で話し、一人称は「オイラ」でアマテラスのことは「アマ公」と呼びます。語尾には「ぜェ」とか「よォ」とか母音の小カタカナが入ることも多く、綺麗なお姉さんと情に弱いという、荒々しくも分かりやすいキャラクターです。このイッスンもまたかわいい。
アマテラスの筆しらべに惚れ込み、その技を盗むために旅に同行した自称・旅絵師の妖精なのですが、アマテラスの旅をサポートするという役割のキャラクターでありながら、道中はほとんどイッスンが「アマ公、○○しようぜェ!」といった感じで引っ張っていくことが多く、ガイド役でありながらイッスンにプレイヤーが感情移入することもたびたびあるので、実質ダブル主人公でもあると思っています。
そして、ラストのあの展開を見れば「ああ、これはアマテラスの物語でありながら、イッスンの物語でもあったんだな」と痛感させられることでしょう。私はプレイ後、シナリオの良し悪しを決めるのはやはり「魅力的なキャラクターの有無」が重要なのだな、とあらためて感じさせられました。
主人公格のキャラクターとしてもう1人欠かせないのが、スサノオです。スサノオは先述の通り、ヤマタノオロチの封印を解くきっかけを作った「大戦犯」でもありますが、イザナギの子孫という自身の生まれについての葛藤を思わせるような描写も多くあります。怠け者でダメダメな男だったスサノオが、彼なりの答えを見つけていくのをイッスンとアマテラスでサポートしているうちに、いつしかプレイヤーはスサノオのせいでヤマタノオロチが復活したことも忘れ、「頑張れ!スサノオ!!」と熱くなっていることでしょう。
アマテラス、イッスン、スサノオ、と主人公格のキャラクターと魅力を簡単にご紹介しましたが、実は「大神」というお話は「ヤマタノオロチ討伐」だけでは終わらない、ある大きな野望がのちのち絡んできます。
つまり、彼ら以外にも重要な人物がめちゃくちゃ出てくるのです。
たとえば、ルー大柴さんのようなカタカナ英語交じりに話す謎の陰陽師・ウシワカというキャラ。彼は、この世界の人間にしては話し方もなんだかおかしいし、アマテラスに変な予言を告げたかと思いきや戦いを挑んできたりなど、何を考えているのか分かりません。
そんなミステリアスなウシワカが、アマテラスやイッスン、スサノオたちの物語とどう絡み、そしてどう終わるのか。
キャラクターそれぞれの個性を殺すことなく、最後までキーマンとして全員を描き切ったシナリオの構成もおみごとですが、それはひとえにこのキャラクターの魅力がそれぞれに素晴らしいものがあったからこそ、なしえた芸当ではないかと思います。プレイ済みのみなさんは、どのキャラがお好きでしょうか?
私はぶっちぎりでイッスンです。