■“説明不足”が当たり前の世界からやってきた!
この作品は1984年に発売されたパソコン版『ハイドライド』をベースに、『ハイドライドII』の魔法という要素(と新たな謎)を加えたスペシャルな移植作品。そして、当時のパソコンゲームというのは、基本的にノーヒントなのが当たり前だったのです。何度も何度もゲームオーバーになってはその原因を突き止めていく。死んで死んで、やっと進めたその先には新たな謎(=死)が待っている……そんなふうにトライ&エラーを繰り返しながら攻略していくものでした。
ただ、このストイックな遊び方は、パソコンゲームに比べて年齢層の低いファミコンゲーマーには当然のことながら支持されませんでした。「敵は強いし、何をしたらいいか全然分かんない」。その捨てゼリフとともに『ハイドライド・スペシャル』を投げ出してしまうチビッコのなんと多かったことか……。
いえ、チビッコでなくとも投げ出す高難易度だったことは、この際置いておきましょう。
さらに、『ハイドライド・スペシャル』はレベルアップしていくと、自分より格下の敵からは経験値が得られなくなります。つまり、つねに自分の強さと見合った互角の敵と殺るか殺られるかのガチバトルをしないと強くなれないのです。うっかりやられてしまったときはゲームオーバーです。
もちろんパスワードを控えておけば続きから遊ぶことはできるのですが、その場合、再開時の経験値は最低値になっています。当時の短いパスワードでは経験値のパラメータまで記録できなかったのかもしれません。
しかし、ここで役立つのがファミコンRPG初の「セーブ機能」!
「1986年にすでにセーブ機能が!?」と驚かれる方も多いかもしれません。ただし、このセーブ機能は、ファミコンの電源を切ってしまうと失われる“一時保存”のようなもの。当時のプレイヤーからは「意味ないじゃん」などと言われていましたが、セーブをしておけばそこまでの経験値を保持したままで再開可能。
そう、『ハイドライド・スペシャル』におけるセーブとは、「うっかり敵にやられてしまってもそれまでの苦労を水の泡にしないための優しさ」だったのです!
画期的な要素を詰めこんだ偉大なRPGの先駆者『ハイドライド・スペシャル』。アイツ、優しいところもあるんだぜ? 35年の時がたった今だからこそ、本作の名誉を少しでも回復できれば幸いです。
それでもゲーム中の謎がほとんどノーヒントなのは変わりないので、今遊んでもクリアまでたどり着けるかどうかは保証できません。
……ちなみにこんなことを書いてきましたが、私は『ハイドライド』シリーズが大好き。とくに『3』! 200階建てのハーベルの塔を登った先にまさか天空の……(以下、長いうえに『ハイドライド・スペシャル』に関係ないのですべてカット)