■『ニセコイ』ファン投票でも上位にランクイン

 最後は、『ジャンプ』のラブコメ作品としては現時点で歴代最長の連載期間と巻数を誇る『ニセコイ』で知られる古味直志氏による、隠れた名作としてファンの間で語り継がれる『ダブルアーツ』。

 2008年に連載された『ダブルアーツ』は、未知の奇病「トロイ」が蔓延する世界で、奇病を患者から吸引することで治療するシスターの“エルー”ことエルレイン・フィガレットと、手をつなぐと人間の力を増大させる事ができる少年・キリの物語。エルーのトロイの発作をきっかけに、2人はいついかなる時でも手をつないでいなければならない運命共同体となる。

 同作は特殊な奇病やそれを防ぐ方法、手をつないで戦う戦術など、豊富な設定が魅力だが、これは古味氏が小学生の頃から構想を温めていた作品。コミックス全3巻、約半年で打ち切りとなったため、目的は達成されずに謎を残すまま最終話を迎えているが、「いついかなる時でも手をつないでいなければならない」というラブコメ要素も新しく、のちにラブコメとして高く評価される『ニセコイ』の人気にもつながったと言えるだろう。

 2015年にはファン投票の結果、「ジャンプ+」で再連載されるという展開もあった『ダブルアーツ』。さらに『ニセコイ』連載中の人気投票では、作中で登場しないにもかかわらず、なぜかヒロインのエルーが10位にランクインするということもあった。それは同作のインパクトがファンの心に強く残っていたからだろう。いまだにファンからは「続きが読みたい」という声も絶えない。

 その後のヒットにつながった、宝石の原石とも言える打ち切りマンガの数々。改めて読み直し、人気のヒントを探るのも面白いかも。

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