■唯一無二のヒトフデ書きローグライクRPG『勇者ヤマダくん』

日本のインディースタジオ「オニオンゲームス」による『勇者ヤマダくん』

 今回最後にご紹介するのは、『勇者ヤマダくん』というローグライクゲームです。本作はオニオンゲームスという日本のインディーゲーム会社で、伝説の名作『moon』を手掛けたラブデリックのメンバーである木村祥朗さんや倉島一幸さんらが作った作品です。

『トルネコの大冒険』や『風来のシレン』といった不思議のダンジョンシリーズなどでもおなじみの”ローグライク”。多くのゲーム好きに支持されているジャンルですが、ふだんゲームをあまりプレイしない人にとってはなかなか手を出しづらいかもしれません。しかし、本作はそんなローグライクの小難しさを「ヒトフデ書き」というシステムによって、お手軽かつ頭脳派な、初心者も上級者も楽しめるデザインとなっているのです。

 主人公は36歳のヤマダくんというゲーム会社をクビになったおじさん。このおじさん自身が作ったローグライクダンジョンを遊んでいくという設定でプレイヤーは次々にダンジョンをクリアしていきます。

 ダンジョンをクリアするとヤマダくんは身の回りにいる奇天烈なキャラクターたちのトンデモ展開に巻き込まれ、ストーリーが展開していくのですが、このどうしようもなくくだらないけどいとおしい独特な世界観が本作の大きな特徴です。硬派なゲームシステムとは裏腹なゆるい世界観に引きつけられることでしょう。

 冒頭でも述べた「ヒトフデ書き」というのは、ダンジョンのフロアを通るルートを一筆書きで決めるというシステムのことです。ダンジョンのフロアごとに5×5のマップが用意されており、そのマスごとにモンスターがいたり、壊さないと通れない岩があったりします。フロアに入ると、スタートからゴールまでの道筋を決めることになるのですが、このときに通れなかったマスがあるとゴール後にペナルティでダメージを受けてしまうので、なるべくすべてのマスを通るようにルートを決めましょう。これがなかなかシンプルで奥が深い。

 序盤はわりにどのルートでも通ることができますが、徐々に難易度が跳ね上がり、きちんとしたルート読みをしていかないとクリアできなくなります。「こんなん無理だろ、ダメージくらいすぎる!」というときは、もしかしたらルートがまちがっているかもしれません。本当にその弓矢を打ってくる敵の前を通らないといけないのか、ほかの道なら被ダメを抑えられるのではないか、などいろんなことを考慮しましょう。

 ルート選びだけでなく、RPGなので装備選びも重要です。ダンジョンごとに装備だけでなく、強化するために必要な素材や魔法の書などが手に入り、それらを周回して収集していくことで、ルート選びではどうにもならないダンジョンも打開していくことができます。

 個性的なキャラクターたちが展開する奇想天外でありながら、なんだかほのぼのする独特なストーリーも盛りだくさん。ダンジョンの数、収集するアイテムの数も膨大で、すべてを網羅しようと思ったら年末年始だけでなく、もはや2021年の間ずっと遊ばないといけないほどボリュームは満点です。

 また、ゲーム内の気の抜けたおじさんの鼻歌で作られたBGMは、どこかで聞いたことがあるようなないような、という曲も多く、なんだか癖になります。ほんわかした遊び心とかっちりと作り込んだ硬派なシステムが同居した唯一無二の世界観を誇るローグライクゲーム。気になる方は、購入前に体験版で遊んでみても良いと思います。ドット絵が好きな方にもおすすめですよ。

 ということで今回は年末年始にじっくり遊べるゲームを3本紹介いたしました。どれも長く遊べる作品ですが、インディーゲームには短くさっくり遊べるものももちろんありますし、今回紹介したパズル、アクション、RPGだけでなくシミュレーションやホラーなどなどジャンルももちろんたくさんあります。

 興味がある方は今回紹介させていただいた作品以外にもストアで探してみてはいかがでしょうか。ただでさえ安いのに、格安のセールも頻繁に行われているので、行かなくなった飲み会代をインディーゲームに充てるのもオツな使い方かなと思います。セール時には5000円もあれば、7、8本買えるので本当にコスパ最強の趣味ですよ。有名なゲームよりインディーゲームに詳しいほうがなんだか通でカッコいいですしね。

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