岡本信彦「声優が失ってはいけないのは、キャラクターへの“好き”という気持ち」/朗読劇『君の膵臓をたべたい』インタビュー(第3回)の画像
朗読劇『君の膵臓をたべたい』岡本信彦インタビュー(第3回)
【画像】朗読劇『君の膵臓をたべたい』で「僕」役!岡本信彦の撮り下ろしフォト

 12月10日、11日に行われる朗読劇『君の膵臓をたべたい』岡本信彦インタビューも、今回で最終回。本作は、高校生の「僕」が正反対の少女・桜良と出会う切ないボーイ・ミーツ・ガールものであり、彼が過酷な運命の中で己を見つめて成長していく姿を描いた青春小説でもある。
 それにちなんで今回は、「僕」にとっての桜良のような、岡本にとって“鏡”となる存在についての質問からスタート。そしてキャリアの中で先輩から学んだことや、後輩に伝えたいことなど、岡本の仕事論も聞いてみた。

 インタビュー第1回第2回はこちら(全3回)

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■声優にとってはキャラクターが己の“鏡”

撮影/高橋しのの

――ヒロインの桜良は「僕」とは真逆の社交的な性格で、彼女を見ることで「僕」は「自分はこういう人間なのか」と自己分析していきますね。「僕」にとっての桜良は鏡のような存在ですが、岡本さんにはそういう存在はいらっしゃいますか。

岡本 僕の場合、キャラクターがそれに近いかもしれませんね。自分に近しいところを持つキャラクターはもちろん、自分にないものを持っているキャラクターも、自分を顧みるきっかけになります。実は大多数のキャラクターが後者なんですが、「なんでこの役のオーディションに受かったんだろう? 自分のどこが良かったんだろう?」と考える機会になるし、他人にそういうことを言われる機会も多くなるんです。それが客観視につながって、「今はこういうところが求められてるんだな、頑張ろう!」とか、「これは出しすぎているから、みんな食傷気味かな」とか、色々考えられますね。

――その中で思わぬ自分と出会われたり?

岡本 思わぬ自分とは違うんですが、僕は怒るキャラクターを演じることがすごく多いんです。でも僕自身は全然怒らないタイプなので、どうしてこんなに怒るキャラクターが来るのかな?と考えたんですよね。そこで「もしかしたら、怒らない人間の怒りだからこそ、アニメと相性がいいのかも」と。リアルな怒りではなく、非日常的な怒りの表現になるので、需要があるのかなと思ったんです。

――怒りっぽい人が演じると、その人自身の怒りが混じってしまいそうですし。

岡本 そんな気がしますよね。普段怒らない僕だと、キャラクターの怒りしか出てこなくて、それがいいのかもしれません。

■「僕はこのキャラクターのここが好きなんですが、どうですか?」

撮影/高橋しのの

――これまで声優の先輩方からいただいた教えで、大事にされていることはありますか。

岡本 もう15年くらい前のことですが、当時の僕は自然にセリフを言うことを大事にしていたんです。でもそうじゃなくて、キャラクターの魅力だったり、一音一音を大切にしたほうがいいと先輩が教えてくださったんですね。それから考えるようになったのが、ある役者さんがキャラクターを演じるとき、「この人がこのキャラをやるからいいよね」というのは、どこに生まれてくるのか?ということ。もちろん声そのものもあるんですが、“その人がそのキャラクターのどこを好きなのか”が重要だと思うんです。
 例えば「僕」なら、彼の内向的な部分を表現したいのか、クライマックスでの感情の爆発を重視するか、それによっても変わってきますよね。キャラクターに対する愛の種類というか、その人物のどこに重きを置くか。それをプレゼンするのがオーディションだと思うし、そのプレゼンが監督やプロデューサーの方向性と合っているかどうかだと思うんです。「僕はこのキャラクターのここが好きなんですが、どうですか?」って。

――では岡本さんが後輩に伝えていきたいことや、教えてあげたいことは?

岡本 「キャラクターに対して“好き”という感情がないと苦しくなるよ」というのは、思いますね。それがないとお金だけのために仕事をやる羽目になって、だんだん自分が小さく狭くなる感じがしてくると思います。“好き”という気持ちで仕事できていれば、それが生きがいにも繋がってきて、仕事が立て込んで体力的に辛くなったときでも何とかなるし、最終的にいいものを生み出せる。逆に“これは仕事だ”という意識で向き合いすぎると、声優は潰れるかもしれませんね。もちろん仕事ではあるんですが、お金のためと割り切った向き合い方だと危ないのかなと。

――声優さんは短期間に非常に多くの役を演じることもありますよね。あまりに忙しいと“好き”という気持ちが擦り減ってしまうことはありませんか。

岡本 そういうときもあるかもしれませんが、やっぱりキャラクターのことは、「誰が嫌いと言っても自分は好きだ」と思わないとキツイでしょうね。作品全体をそう思えるとなおいいんですが、まずは自分の役を好きでいる。でもそれは声優なら、割とみんなできると思います。基本的にはその役を演じるのは自分だけなので、「これは自分のキャラクター」と思うと愛しくなってくる。そう思えなくなっていたら、食べていくためだけの“ライスワーク”になってしまっている可能性があるので、本当にしっかり気分転換したほうがいいかもしれませんよ。その気持ちが演技に出てしまうと、キャラクターにも作品にも、周囲の方にもファンの方にも失礼ですから。

――お仕事を何本も抱えているときは、どんな風にリセットされているんでしょうか。

岡本 スタジオを移動すると演じるキャラクターも変わるので、そこでリセットできるし、それが声優の楽しさでもありますね。声優の仕事って瞬間芸に近い気がしていて、朝2本この役をやって、夜2本また違う役をやって……という感じなので。そこが面白いなと思います。

 

撮影/高橋しのの
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