毎年ほぼ360日は部活に費やしていた
ーー本作は「ASMR部」の青春ストーリーでもありますが、大西さんご自身は部活動の思い出はありますか。
私は小学校、中学校ともに、強豪校で吹奏楽部に所属していたんです。中学生のときは、ほぼ360日くらいを部活に費やしていたと思います。
ーーそれは苦しい気持ちよりも、楽しい気持ちが勝るものなのでしょうか。
半々ぐらいですね。吹奏楽って、最終的にみんなでひとつの音楽を作り上げていくものなので、達成感や、単純に演奏していて楽しい気持ちは当然ありました。だけど、そこに行くまでのパート練習や個人練習は辛かったですね。
部員の人数もすごく多かったのですが、コンクールに出られる人数は決まっているし、レギュラーを選抜するためにパートごとのオーディションがありました。
ーー声優業界同様のオーディションがあったんですね。
わりと中学の時からそういう世界にいましたね。あと、その時代にしごかれたときの精神性は、今でもどこかに残ってくれているのかなと思います。今ではもう楽器も吹かないですし、楽譜も読めなくなっちゃったんですけどね…。
いろんなことを背負い過ぎていたことから学んだ、引き算
ーーいま大西さんにとって、「演じること」は、どういったものになっていますか。
ちょうど今年、デビューして10周年なんです。振り返ると私は今まで、勝手にいろんなことを気にしたり、背負いすぎていたなと思っていて。演じることへの“頑張らなきゃ”という緊張感で張り切りすぎて、自分をがんじ絡めにしていたことに、ここ1、2年で気づけたんです。
なので、最近はもっと楽しく役に向き合ったらどうなるのかなって考えを変えたんですよね。結果、演技の幅も出て、とても体が軽くなった感じがしました。急なディレクションにも対応しやすくなったと思います。今、ようやく“引き算って大事なんだな”と実感をしていますし、もし引き過ぎたら足せばいいという考えなんです。一方で、引き算の難しさも実感しています。これまで、足し算ばかりしてきたので、その方法を学んでいる最中ですね。
ーー約10年の中で、いろんなものを積み重ねてこられたからこそ、ということでしょうか。
そうだと嬉しいですね。苦しい時期もありましたが、足し算をしていた自分も悪くないと思えるように、いま引き算している感じです。
なので、このゆりという役も、今のタイミングで出会えて、本当に良かったと思います。もっと昔の私だったら、 “この子の気持ちがわからない!”と考え過ぎていたかもしれません。でも今は、“この子はこういう子なんだな”と受け止めて演じることができます。
ーー最後にお芝居の面白さ、楽しさを感じる瞬間を教えてください。
今こういう時代になって、アフレコは分散収録になることが多くなったので、掛け合いする相手がいないことが、この業界でも日常になってしまっています。
たとえば、家で台本を読んで、他のキャストさんのセリフを“こういう感じでくるかな”と考えたりもするのですが、 その予想は私の演技の幅の中での想像に過ぎないんですよね。だから、その役の声優さんが持ってきたものを実際に受けて、自分もセリフを返せる環境がいかに恵まれていたのかを、日々身に沁みて感じます。やっぱり、直接掛け合いができるアフレコは楽しいですし、現場でのセッションのような感覚、お互いがお互いを引き上げ合う瞬間が、お芝居をしていてなにより面白い瞬間なんですよね。
【PROFILE】
大西沙織 おおにし・さおり
8月6日生まれ、千葉県出身。2012年に声優デビュー。18年、第12回声優アワード助演女優賞・パーソナリティ賞受賞。近年の出演作に『夫婦以上、恋人未満。』(渡辺星)、『可愛いだけじゃない式守さん』(式守さん)、『ウマ娘 プリティーダービー』(メジロマックイーン)、『新米錬金術師の店舗経営』(アイリス・ロッツェ)、など。
《作品情報》
『ある朝ダミーヘッドマイクになっていた俺クンの人生』
TOKYO MXにて放送中&各種配信サイトにて配信中
《キャスト》
浅草ゆり:大西沙織
蔵前ぱんだ:鬼頭明里
虎ノ門うめ:相良茉優
鐘ヶ淵つるぎ:Lynn
浅草とと:久保田未夢
浅草かおり:水橋かおり
俺クン:杉田智和
《スタッフ》
監督:葛西良信
キャラクター原案:cura
キャラクターデザイン:大塚美登理
アニメーション制作:株式会社 INDIVSION/株式会社エカチエピルカ
製作:俺クンの人生製作委員会
公式 HP:https://orekun.jp/
Twitter:@raroanime
©俺クンの人生製作委員会