小野大輔
小野大輔

声優・小野大輔が音楽活動を始めてから、今年で15年。この記念すべき年に発表されるのが、五つの楽曲&朗読を収めたミニアルバム『Sounds of Love』だ(2022年10月19日発売)。

本作には、ゴスペラーズの酒井雄二・村上てつややコトリンゴといった有名アーティストや、上田麗奈・羽多野渉・豊永利行ら親交の深い声優仲間たちが参加。さらに小説家・青山美智子が各曲の“プロローグ”をショートストーリーで描き、ミニアルバム全体をひとつの物語に紡ぎあげている。

多くの才能が集ったこの贅沢な1枚は、どのようにして誕生したのだろう。インタビュー第1回は、本作が動き始めたきっかけやその背景から語ってもらった。

 

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コロナ禍の中でも確かに存在する人との縁や絆を音楽で表現したい

 

――このミニアルバム『Sounds of Love』には楽曲だけでなく、1曲1曲に小野さんが朗読する「Prologue」が収録されていて、新しい試みですね。この企画が動き出したきっかけから、教えていただけますか。

 

2020年に『STARGAZER』というミニアルバムを発売してから2年が経ちましたが、この2年間は「今、何ができるのか。何をするべきか」ということを見つめ直せた時期だったと思います。そういう時間を経て「ミニアルバムを出そう」となったときに思ったのが、このコロナ禍で気付いたことや、その中でも確かに存在する人との縁や絆を音楽で表現したい、ということ。今回はその想いからスタートしました。

 

――では本作にコラボレーションが多いのは、その想いゆえでしょうか。

 

そうですね、今回は「人の力を借りよう!」と。一人で作らないということは、最初から決めていました。この2年間、音楽活動で繋がった縁がどんどん太くなって、色々な人と結びついて、新しい出会いを生み出してくれた。そのひとつがゴスペラーズさんとの出会いです。

そもそもは、2021年のゴスペラーズのライブに、出演者として呼んでいただいたんです。そのライブは、お客さんが声を出したり体を動かしたりしなくても楽しめるように、物語と歌でライブを表現するという構成で、最初は声の出演をしてほしいとオファーをいただいたんですね。僕があちこちで「ゴスペラーズが好きだ」という話をしていたら、それが事務所の方に伝わっていたそうで。その後さらに声だけでなく、サプライズゲストとしても招いてくださったんです。僕にとっては人生最良の日といっても過言ではなく、そこで調子に乗って「僕の曲書いてください」って言っちゃったんですよね。すると皆さん「いいよ!」「書く書く!」と言ってくださって。

 

――長年のラブレターが届いたんですね。

 

僕はずっと言霊があると思っているので、「言って叶うものなら」と言ってみたんです。そしたら、本当に叶っちゃった! だから「Sounds of Love」がこの5曲の中で最初に生まれた楽曲です。メンバーの皆さんがせっかく書いてくださったので、「Sounds of Love」だけだともったいない。「もう全部採用して、それだけでアルバムを作ればいいじゃない!」と思いました(笑)。さすがに制作チームが「せっかくならいろいろな方とコラボしましょう」と。「ならばもう1曲だけ、ゴスペラーズさんの楽曲を!」とお願いして、村上てつやさんの「DING DONG」も入れてもらいました。

 

周囲にいてくれる人々こそが、僕を映し出す究極の“鏡”

 

――誕生のきっかけはゴスペラーズとの出会いだったわけですが、ミニアルバム全体のコンセプトはどのようにして決まったのでしょうか。

 

ミニアルバム全体を統一する軸がほしいねって話が出たときに、僕がずっとお世話になっている音楽ディレクターが「“鏡”はどうですか?」と提案してくれたんです。その鏡というアイディアの元は、ミヒャエル・エンデさんの『鏡のなかの鏡』という短編集でした。

 

――名作児童文学である『モモ』や『はてしない物語』の作者ですね。

 

はい。『鏡のなかの鏡』は、ひとつの短編と次の短編が鏡のように少しずつ投影されていって、物語と物語が繋がっていくという構成になっているんです。確か30編あるんですが、繋がっていった最後の話が、最初の話に繋がるんです。

 

――面白いですね!

 

じゃあアルバムも、楽曲と楽曲のモチーフが少しずつ重なっていったら繋がるね、面白いねって。そこからヒントをもらって“鏡”をテーマにしようと決まったんです。そして『Sounds of Love』の“鏡”というのは、僕を取り巻く縁のある人々。彼らこそが僕を映し出す“鏡”。僕は自分にあまり興味がないんですが、周りの人を見ていると「あ、僕ってこういう風に映ってるんだな、悪くないな」「喜んでくれてるな、良かった」と思える。だから自分を映し出す人という究極の“鏡”をこの作品で表現しようと思って、僕をイメージして各楽曲を作ってもらいました。

 

――“小野大輔”という一人の人物を描いているのに、これほどバラエティ豊かな5曲になったんですね。

 

僕は声優なので、歌を歌うときには“演じる”ということを念頭に置いてます。その楽曲の主人公を演じる。そう考えると、この5曲は全部主人公が違うんです。これはみんな僕であって僕じゃないし、僕じゃないけど僕なんですよね。

 

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