四畳半タイムマシンブルース
©2022 森見登美彦・上田誠・KADOKAWA/「四畳半タイムマシンブルース」製作委員会

京都のおんぼろアパート下鴨幽水荘で、クセモノぞろいの大学生たちが青春群像劇を繰り広げるTVアニメ「四畳半神話大系」。その続編『四畳半タイムマシンブルース』が、9月30日より全国劇場にて3週間限定公開中だ(「ディズニープラス」にて独占配信中)。

突如現れたタイムマシンを、「壊れたクーラーのリモコンを過去から回収する」というくだらない目的に使おうと思いつくあたりで、彼らが青春を不毛に浪費していることが伝わるだろう。しかし、そんなふざけた日常は、タイムパラドックスに気付いたことで一転。主人公の「私」たちは、自由すぎる悪友たちの過去改変を食い止め、世界を救うために奔走する。

本作を手掛けた夏目真悟監督インタビューの後編は、「私」役の浅沼晋太郎をはじめとする声優陣の話からスタート。そして夏目監督が思う“理想の監督像”や今後の展望にも迫った。(前後編)

 

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夏目監督インタビューの前編はこちらから

 

小津と同じくらい奇想天外な声優・吉野裕行

 

――クセモノぞろいの本作のキャラクターを演じられた声優陣についてもお話をお伺いしたいのですが、まずは主人公「私」役の浅沼晋太郎さんのアフレコはいかがでしたか。「私」と言えば、古風な言い回しや恐ろしい分量のモノローグが印象的ですが。

 

浅沼さんは一番「私」を理解している人ですし、アフレコもかなりこだわっていましたね。モノローグとセリフを明確に使い分けなければいけないということで、何度も録り直しましたし、ご自分から「もう1回やりたい」とおっしゃることもありましたし。あと今回は「四畳半神話大系」の「私」とちょっと違うんですよ。そういうところで、浅沼さんとは「こういう演出をしたい」と結構話し合って調整しました。「四畳半神話大系」ではなかなか言わなかったことを今回は言ったりするので、浅沼さんとしてはそこをどう消化するか、悩まれていたようです。

 

――「四畳半神話大系」との違いというのは、具体的にはどんなところでしょうか。

 

「四畳半神話大系」では「私」の感情は割とフラットでしたが、今回は明石さんとの関係性について、大きな目標があるわけです。そこに向けて気持ちの起伏を作っていく必要があったので、それがかなり大変だったんじゃないでしょうか。前作の雰囲気を保ちつつ、呼吸ひとつ分くらいの細やかな感情の上げ下げを調整してもらったので、その対応力には驚かされました。何より、浅沼さんの「四畳半」に対する愛の大きさを強く感じましたね。すごくストイックに作品と向き合っていて、さすがだなと思いましたし、非常に嬉しかったです。

 

©2022 森見登美彦・上田誠・KADOKAWA/「四畳半タイムマシンブルース」製作委員会

――「私」の想い人である明石さんを演じられたのは、透明感溢れる声が魅力的な坂本真綾さんです。「四畳半神話大系」に比べると、今回の明石さんは少し“ツン”度が和らいでいたように感じました。

 

そうですね、今回は多少距離が縮まっているところから始まっているので、少し柔らかい明石さんになっています。坂本さんとは初めてのお仕事でしたが、視聴者としてずっと聴いてきた方で好きな声優さんだったので、今回ご一緒できて嬉しかったです。

 

――アフレコはいかがでしたか。

 

明石さんは、物語のかなり早い段階で、タイムトラベルの影響を受けているんですよね。だから明石さんの認識と周囲の認識がズレているという状況が起きて、そういう演技をしなければいけないので、かなり難しかったと思います。ただ現場では、音響監督の木村さんがとても丁寧にエスコートしてくださって、明石さんにとっての時間軸で順録りしていきました。自分はもう、坂本さんが演じる明石さんはかわいいなと思いながら聴いていましたね(笑)。

 

――(笑)。そして「私」にとって因縁の悪友・小津役の吉野裕行さんはいかがでしょう。

 

自分は吉野さんがすごく好きで、「スペース☆ダンディ」という作品でもメインのキャラクターをやってもらったこともありますが、小津と一緒で奇想天外な方。演技プランの立て方が独特で斜め上から来るので、アフレコでご一緒する度に毎回新しい驚きをくれるんです。今回印象的だったシーンのひとつが、リモコンのお通夜のシーン。小津が泣いている絵があるので「泣き声をください」と言ったら、自分的には嘘泣きっぽい声を想定していたのに、吉野さんは嗚咽をこらえるような泣き声(笑)。「でも確かに小津なら噓泣きっぽい泣きはしないな、やるなら本気で泣くな」と、さすが小津を理解している吉野さんだと思いましたね。

 

©2022 森見登美彦・上田誠・KADOKAWA/「四畳半タイムマシンブルース」製作委員会

 

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