メイドインアビス 小島正幸
©つくしあきひと・竹書房/メイドインアビス「烈日の黄金郷」製作委員会

シリーズ第2期、アニメ『メイドインアビス 烈日の黄金郷』が、アニメファンからの熱視線を集めている。つくしあきひと先生の描く原作の力はそのままに、緻密な演出と感情を揺さぶる描写の本作で、監督を務めるのが小島正幸。

今回、17年の第1期、19年の総集編劇場版2部作、20年の劇場版『メイドインアビス 深き魂の黎明』と、シリーズすべてを手掛ける小島監督にインタビューを敢行。少女・リコと、ロボット・レグ、「成れ果て」のナナチや、第2期から登場しているキャラクター、ヴエコやファプタの魅力をお聞きした。さらには監督が影響を受けたアニメーションへの想いや、お仕事への向き合い方をたっぷり語っていただいた。

 

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「『成れ果て村』の市場は中東のバザールとか、アメ横みたいなイメージ」

メイドインアビス

ヴエコとイルミューイ。この水がもたらす影響は…。

©つくしあきひと・竹書房/メイドインアビス「烈日の黄金郷」製作委員会

――この第2期はオープニングも素晴らしいですよね。物語を追うと、1話ごとに違う気持ちでオープニングを見られる気がしています。

 

オープニングは、演出の小出卓史くんに全部お任せしました。うまいバランスで作ったんじゃないかなと思いますし、とても満足しています。原作を読んでると、なるほどと思う場面もあるし、読んでない人が観ても、すごく惹きつけられるオープニングですよね。

 

――また、本シリーズはKevin Penkinさんが手掛ける、劇伴も話題です。

 

音楽は、もう基本的にはKevinに任せているんです。なぜなら、彼自身が『アビス』の熱烈なファンなんです(笑)。今回に関しては、1期のときの楽曲も使う予定で、新規の曲数は少なくていいんじゃないかという話も最初にしたんですよね。けれど、彼の作品への理解度は本当に深いので、さまざまに音楽を作ってくれました。『アビス』って、おどろおどろしい音楽なら、いくらでも作りたくなるような話なんですよ。けれど、それより「成れ果て村」のエネルギー自体を感じてほしかったんです。例えば、オオガスミが出てきて、「成れ果て」たちが戦うアクション場面がありますが、ああいうのは「成れ果て村」にとって祭りだという解釈で、Kevinにはストレートにお祭りの曲をお願いしました(笑)。

 

 

ナナチとマジカジャ。マジカジャは「成れ果て村」を案内してくれた。

©つくしあきひと・竹書房/メイドインアビス「烈日の黄金郷」製作委員会

 

――(笑)。『アビス』は、キャラクターたちの食や排泄などの生理や、視線、匂いなどの描かれ方も素晴らしいですよね。監督はこうした身体性をどうお考えになり、本シリーズに取り組まれていますか。

 

原作自体が身体性や生理を大事にしている作品ですからね。まず食というところも、食材一つとってもリアルに描かないと原作から外れていくんじゃないかなと思っていて。直接お話に関わりのないところでも、具体を描いていかないと『メイドインアビス』ではなくなってしまうという想いがありました。なので、匂いにしろ、生理的なものにしろ、それをちゃんとやればこそ、リアリティが生まれてくると感じています。

 

――リコがお腹を下すシーンや、ムーギィの店で食事をするシーンはユーモアもありながら、具体性を感じました。他にも市場のシーンの不思議な熱気は印象的です。

 

ありがとうございます。「成れ果て村」の市場は、トルコのバザールや、昔の上野のアメ横の裏通りみたいなものを勝手にイメージしてまして。そういった独自の雰囲気を感じてもらえたらと思いますね。

 

「個性があって、声に魅力がある声優には、説得力と存在感がある」

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ファプタとレグ。ファプタとイルミューイの声は久野美咲。

©つくしあきひと・竹書房/メイドインアビス「烈日の黄金郷」製作委員会

――リコ、レグ、ナナチを演じる声優陣、富田美憂さん、伊瀬茉莉也さん、井澤詩織さんも印象的ですが、監督からご覧になってみなさんのアフレコはいかがですか。

 

3人は、もう僕が何も言わなくても、役をちゃんと掴んでいますからすごくスムーズに進んでますね。リコ役の富田さんは1言えば、10で応えてくれますし、1期のときはまだ高校生だったと思うんですが、当時から勘が抜群にいい子だなと思っていました。1期から時間も経っているので、今回彼女が自然にリコになれるか収録前は心配しましたが、テストですぐに杞憂だったとわかりました(笑)。伊瀬さん、井澤さんも、同じくレグ、ナナチという役を捉えていますよね。

 

リコとヴエコ。演じる、二人の芝居力も魅力。

©つくしあきひと・竹書房/メイドインアビス「烈日の黄金郷」製作委員会

 

――第2期からのキャラクターの魅力に関してはどうでしょう。

 

ヴエコに関しては寺崎裕香さんで本当に良かったです。やはり実力のある方ですし、こちらが何を求めているのかを瞬時に汲み取って、それを実行できる人なんですよね。今回ヴエコはナレーションもあるし、その存在感が出ないと2期が成り立たないと思っていたんですが、結果、魅力的な存在感を放っているんじゃないかなと思います。また、ファプタはオーディションで久野美咲さんに決めました。オーディションのとき、この人に演じてもらえたら、ファプタが化けるかもしれないと思ったんです。けれど、未知数でした。というのも、ファプタはいろんな感情を出さないといけないし、僕のほうでイルミュ―イとファプタは同じ人にやってもらいたかったんです。その声に魅力を感じたので、最終的につくし先生も僕も彼女を推しまして。久野さんは大変だったと思いますが、結果的には彼女のおかげで、ファプタはいろんな幅を持ったキャラクターになりましたね。

 

――あらためて監督が魅力を感じる声優の条件はありますか。

 

一言で言うと個性ですね。極論を言うと、演技ができなくても声を聞いて、ハッとさせられる人に惹かれます。もちろん、その声が作品に合うかどうかは大事ですが、それが第一ではないんです。声に魅力があれば、自然とキャラクターに説得力が出てくるんですよね。そういう存在感のある声優さんに、より魅力を感じています。

 

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