どうすれば、より物語に惹き込まれるのかを考える

メイドインアビス

ナナチと親友のミーティ。仲良しの二人が切ない。

©つくしあきひと・竹書房/メイドインアビス「烈日の黄金郷」製作委員会

――監督は80年代から演出を手がけられていますが、アニメーションを志すきっかけはどのようなことだったのでしょうか。

 

うーん、やはり昔からアニメが好きでしたし、映画が好きだったということに尽きると思います。僕らの年代だと宮﨑駿さんや高畑勲さんが映画を作って、上映していた頃なので、作品を映画館で目の当たりにしたことが、きっかけといえるかもしれません。アニメって絵なので、子どもの頃はなんとなく実写の迫力に勝てないだろうと思っていたんです。でも、宮﨑さんや高畑さんの作品を観たら、アニメーションの文法としてのリアリティが存在していることに気づきまして。そして、アニメーションに実写には捉えられない力を感じたんですよね。高校の頃にそれを発見して、この世界に関わっていきたいな、と思ったんです。

 

――それはすごいですね! その頃から映像演出に注目していたということですよね。

 

言語化はできてなかったと思います。でも、その感覚は今に至るまで持っていますね。アニメの場合、マンガもそうですが、人物や背景も含めて、抽象化し、情報量をコントロールしているわけです。そのときにどういうカット割りをすれば魅力的なのか、どういうアングルで映せばより物語に惹き込まれるのか。そんなことを考えるのが楽しかったし、気になっていたんです。

 

――では宮﨑監督、高畑監督の作品にはその後も影響を受けてきた、と。

 

そうですね。とくに高畑さんの作品は本当に勉強になりました。あの方は絵が描ける方じゃないんです。でも、すべての作品が高畑さん印になっている。なぜそういうことができるかと言えば、作り手が作品のキャラクターをどう捉えているかが明確にあるからです。そういう部分から、演出というのはこういうことだなと知ったし、わかっていきました。

 

――今後、監督ご自身が、ご自分のお仕事の中で挑戦されたいことはありますか。

 

具体的なものは正直ありません。ただ、毎回作品を作るたび、こういうこともできたんじゃないかという気持ちがある。これまで僕が携わってきた作品は、すべてその繰り返しでした。それこそ『アビス』が続くとしたら、1期でできなかったことを劇場版でやろうと思ったし、劇場版でできなかったことを2期でやってきましたので、3期があるとしたら、この2期でできなかったことをちゃんとやりたいです。

 

メイドインアビス

ヴエコのたどる運命にも注目。

©つくしあきひと・竹書房/メイドインアビス「烈日の黄金郷」製作委員会

――『メイドインアビス 烈日の黄金郷』はこれから終盤に向かいます。注目してほしい点をお聞かせください。

 

僕は原作があるアニメの際は、原作を翻訳するというイメージなんです。『アビス』はとくにその魅力を十二分に出すということに全力を尽くしています。それを受け取っていただければと思いますし、全部に答えが出る作品ではないので、みなさんに考察して楽しんでいただけたら嬉しいですね。

 

――最後に、監督ご自身のキャリアにとって、本シリーズはどんな作品になっていますか。

 

本当にこの原作をいただいて、僕自身の全力が発揮できる作品に巡り合えたと感じています。自分が培ってきたノウハウが100%出せる作品ですし、これからもこの『アビス』の世界とその魅力を表現していきたいなと思っています。

 

【プロフィール】
小島正幸 コジマ マサユキ

1961年生まれ、山梨県出身。アニメ―ション演出家、監督。82年に演出デビュー。『あずきちゃん』でアニメーション初監督。これまでの主な監督作に『MASTERキートン』(98年)、『花田少年史』(02年)、『MONSTER』(04年)、『太陽の黙示録』(06年)、映画『ピアノの森』(07年)、映画『チベット犬物語 〜金色のドージェ〜』(12年)、『ブラック・ブレット』(14年)など。17年からの『メイドインアビス』シリーズでは、劇場版を含めた全作で監督を務めている。

 

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