心底アニメの現場はおもしろいと感じている

 

――青春ストーリーの本作ですが、川越監督の青春時代はいつでしたか。


「僕は幼少の頃の夢が競馬の騎手で、その流れで高校を1年で中退して、海外の競馬学校に入学し、厩舎に就職した経験があります。16歳から21歳までを海外で過ごしたのですが、その期間が俗に言う青春だった気がします。結果として、騎手としてデビューすることは出来たもののキラキラしたことばかりではなく、ビザの問題や才能の限界を感じてすぐに引退し、帰国しました。ですがそのときの挫折や、楽しかったこと、ガムシャラに夢に向かって努力したこと、全てが何がしかに形を変えていまの自分に活きているように思います」

 

――具体的にはどんなことでしょうか。


「コミュニケーションの取り方だったり、働き方だったり、考え方だったり、という感じですね。僕にとっては海外でのそういった経験が青春ですが、それは普通に高校で生活してても起こることだと思いますし、何か自分を形作る行動を起こしているときは後から見て、全て青春なのではないかと思います。

孤独だったり、仲間がいたり、打ち込むものがあったり、あるいはそれがなくてただ探していたり…。色々な形があるとは思うのですが、自分の可能性を試しているとき、模索しているときこそ、青春なのではないかと思います」

 

――おっしゃるとおり、この作品でも一通りではない青春の形が描かれていますよね。また、監督が影響を受けたアニメがありましたら、教えていただけますでしょうか。


「まず、幼少の頃は『みどりのマキバオー』が大好きでした。ただただ熱いし、カッコ良いし泣けるんです。騎手を目指したのもこの作品の影響を受けたからで、いまアニメの監督をしているのもこのアニメに夢をもらった経験があるからです。いつか自分も、子どもに夢を持ってもらえるような映像作品を作りたいと、胸に刻んでいる作品です」

 

――『みどりのマキバオー』のギャグとキャラクターたちの一生懸命さはどこか本作にも通じますね。アニメの一方で、どんな映画をこれまでに吸収してこられましたか。


「10代~20代は北野武監督の映画がひたすら好きで『BROTHER』がとくに好きでした。海外で撮られた日本映画ですが、海外に行く自分と、どこか重ね合わせて観ていたのかなと思います。いまもよく観るのですが、北野映画は、一般的なアニメーションの演出とは対極にある現実主義的な話や演出なので、僕の個人的な憧れの部分が強いのだとも思いますね」

 

――アニメーション業界に入られてからは、どんな作品をご覧になっていますか。


「仕事を始めてからは師匠である矢嶋哲生監督の影響で、クリストファー・ノーラン監督の作品が大好きになりました。『インターステラー』がとにかく好きでしたね。演出になりたての頃は毎日観ていました(笑)。音楽の使い方や、セリフの引用の仕方がすごく好きなんです」

 

――ぜひ、監督が作るSF作品も拝見したいです! 最後に、作品にちなみ、いまお仕事の中でコミュニケーションの大切さをどんなときに感じますか。


「アニメ制作は分業かつ膨大な人数が関わるので、どうすればやりたいことを上手くいろんな人に伝えられるのか、というところに日々頭を悩ませてます。ある時は、気を遣って慎重に話すほうが良いときもあれば、気を遣わずにズバズバ伝えたほうが良いときもある。言葉だけで伝えられることもあれば、絵を描いて動きを描いて伝えなきゃいけないときもあるんです。

なので、アニメの現場には色々なコミュニケーションの形がある。それは、多くの人が関わるアニメ制作の現場だから起こり得るすごく楽しい部分であり、同時にとても難しい部分でもあると思っています。

けれど、そんな色々なコミュニケーションの渦の結果として、僕が最初に目指したフィルムに近づけるどころか、色んな人のイメージが乗って自分の想像以上のものができることがある。そういうとき、心底アニメの現場はおもしろいと感じますね」

 

 

『古見さんはコミュ症です。』特集はこちら!

 

PROFILE
川越一生
かわごえ かずき
大阪府出身。アニメーション監督。アニメ『ベイブレードバースト』シリーズや『文豪とアルケミスト~審判ノ歯車~』で絵コンテや演出を務める。21年『古見さんは、コミュ症です。』1期で監督となり、現在放送中の2期でも監督を務めている。

 

《INFORMATION》


『古見さんは、コミュ症です。』
毎週水曜日、絶賛放送中
24:00~テレビ東京
24:30~BSテレ東
25:35~テレビ大阪
26:05~テレビ愛知
※放送時間は予定です。都合により変更になる場合があります。
Netflixにて、独占配信中

公式サイト
https://komisan-official.com
公式Twitter
@comisanvote

《STAFF》
総監督:渡辺 歩
監督:川越一生
シリーズ構成:赤尾でこ
キャラクターデザイン:中嶋敦子

《CAST》
古見硝子:古賀 葵
只野仁人:梶原岳人
長名なじみ:村川梨衣
山井 恋:日高里菜
中々思春:大久保瑠美
上理卑美子:藤井ゆきよ
矢田野まける:前島亜美
地洗井茂夫:赤羽根健治
井中のこ子:潘めぐみ
尾根峰ねね:青木瑠璃子
尾鶏かえで:森山由梨佳
園田大勢:佐藤悠雅
忍野裳乃:小野賢章
鬼ヶ島朱子:ブリドカットセーラ恵美
古見秀子:井上喜久子
古見将賀:星野充昭
古見笑介:榎木淳弥
只野 瞳:内田真礼
片居 誠:神尾晋一郎
佐々木あやみ:髙橋ミナミ
加藤三九二:内村史子
成瀬詩守斗:三浦勝之
米谷忠釈:鵜澤正太郎
ナレーション:日髙のり子


アニメーション制作:オー・エル・エム
制作:小学館集英社プロダクション
©オダトモヒト・小学館/私立伊旦高校

 

STORY
人付き合いを苦手とする症状「コミュ症」。またはその症状を持つ人を指す。極度のコミュ症である高校生・古見さんが出会ったのは、“普通すぎる”クラスメイトの只野くん。 人前で、すぐに緊張してしまう古見さんの夢は、「友達を100人作る」こと。古見さんの「1人目の友達」になった只野くんは、残り99人の友達づくりを手伝うことに。個性派揃いの高校で、古見さんの夢は叶うのか…。

 

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