川越一生監督・独占ロングインタビュー(3)『古見さんは、コミュ症です。』/ガムシャラに夢に向かって努力したこと全てが、いまの自分に活きているの画像
川越一生監督・独占ロングインタビュー(3)『古見さんは、コミュ症です。』/ガムシャラに夢に向かって努力したこと全てが、いまの自分に活きているの画像

これまでにアニメ『ベイブレードバースト』シリーズや『文豪とアルケミスト』で演出や絵コンテを手掛けてきた川越一生監督。インタビュー最終回の今回は、未来のアニメーターや業界志望の方にも読んで頂きたい、アニメーション作りの魅力のお話をお届けします。さらには、監督のいまに繋がる、青春時代の思い出も!

 

※ ※ ※

 

 

音がピッタリはまった際の気持ち良さ

 

――本作は映像や音楽演出の素晴らしさにあふれていますが、本作の世界観を描くうえでのこだわりをお聞かせください。


「僕自身は、“映像が視聴者に与える印象の6~7割は音が決める”と考えています。悲しい顔をしているキャラがいたとして、そこに悲しい音楽があればただひたすらに悲しさを煽るわけですが、コミカルな音楽が付いていればそれはコメディに思える。とくに『古見さん。』という作品に関して言えば、古見さんの表情芝居がほぼなく、セリフ自体も少ない分、8割くらいの音の印象がそのまま視聴者に入ってしまうのではないかと思っています。なので、シンプルにシーンの音楽のはめ方だったり、その選曲や声だったり、というところは細心の注意を払っています」

 

 

 

――まさに、音楽の力に溢れた作品でもあるんですね。


「そうですね。この作品にとって音楽はすごく大事です。あくまでキャラの心情に寄り添いつつ、コメディ作品としての音楽の乗せ方や切り方を忘れないように毎話数、試行錯誤しています。橋本由香利さんの音楽はどれも本当に素晴らしくて、音楽演出について褒めていただけるとすれば、それは良い曲がたくさんあるゆえだと思います。たとえば第一話の黒板のシーンは、映像を先行して橋本さんにお渡しして、映像に合うように、セリフがなくとも二人の感情を表現できるように音楽を特別に作っていただいていますね」

 

――すごくエモーショナルなシーンでした。


「ありがとうございます。あのシーンは、音楽が来てから再度カットの尺を調整して、音にはめるという手順を踏んでいます。個人的なテーマの一つとして、音がピッタリはまった際の気持ち良さを最大限出したい、と常に思って演出しているので黒板のシーンはその結果が大きく出てくれたシーンだと思います」

 

 

  1. 1
  2. 2