木村昴インタビュー(1)「今の僕があるのは幾原監督が拾ってくれたおかげ」/劇場版『RE:cycle of the PENGUINDRUM』(『輪るピングドラム』)特集の画像
©イクニチャウダー/ピングループ ©2021 イクニチャウダー/ピングローブユニオン

『少女革命ウテナ』で知られる幾原邦彦監督が、当時12年ぶりに発表し、放送前から大いに注目されていたオリジナルアニメ『輪るピングドラム』。2011年に放送された本作は、謎めいたストーリーや独特の世界観で幅広い層を虜にし、今なお語り継がれている。その10周年プロジェクトのひとつとして制作された劇場版『RE:cycle of the PENGUINDRUM [前編]君の列車は生存戦略』が、4月29日にいよいよ公開される。

そこで「WEB声優MEN」では、物語の中心となる高倉兄弟妹(冠葉・晶馬・陽毬)を演じたキャスト3名にインタビューを敢行! まずは冠葉役の木村昴のインタビューを全3回でお届けする。第1回では、TVシリーズを再構築し、完全新作パートもあるという劇場版の魅力、そして10年ぶりのアフレコのエピソードを聞いた。(全3回)

 

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単なる総集編でもダイジェストでもない

劇場版場面カットより 荻野目桃果(CV. 豊崎愛生)

――今回『輪るピングドラム』が10年の時を経て、劇場版『RE:cycle of the PENGUINDRUM』として生まれ変わります。作品だけでなく、観る側の価値観や社会の常識も変化していますから、10年前とはまた違う化学変化が生まれそうですね。

 

その通りで、皆さんもおそらく当時とはまた違った目で、『輪るピングドラム』という作品を観られるんじゃないかなと思います。皆さんには、今回の映画は単なる総集編やダイジェスト的なものとは全然違うとわかった上で、観ていただきたいんですよね。この10年の間に幾原監督の中でより熟成された『輪るピングドラム』を、当時のエピソードを使って真新しく生まれ変わらせた、まさに“リサイクル”した映画になっているので、僕はもう新作と言っていいんじゃないかなと思うくらいです。

何と言っても、監督の編集の妙と言うか、シーンを切り取るポイントがすごいんですよ。僕だと「もっといいシーンがあったのに」なんて思ってしまいますが、監督は語り継がれるような名シーンは敢えて使わないし、その切り取ったシーンも時系列どおりではなく、入れ替えている。そうすることでシーンの意味合いがちょっとずつ変わっていくんですよね。本当に面白い、すごい映画ですよ。

 

――久しぶりにご覧になって、受け取り方が変わった部分はありましたか。

 

今だから言いますが、当時は何の話なのかよくわからなくて(笑)。当時の僕はあくまで、高倉冠葉のフィルターを通して作品を見ていたので、物語を俯瞰して観るということはしていなかったんですよ。しかも、これは個人的な話になりますが、僕はこの作品をやるまで『ドラえもん』のジャイアン役しか経験がありませんでした。僕にとって『輪るピングドラム』は、ターニングポイントになった重要な作品であると同時に非常に苦労した作品で、当時は完成した作品を観られる状態ではなかったんですよね。観ると落ち込むから(笑)。

だから僕が知ってるのは、僕の持っている台本を通しての『輪るピングドラム』だけ。しかも幾原監督は先々の展開を言わないというスタイルだったので、毎週毎週、もらった台本のところまでしかわからない。目の前の1話に全力で取り組むというスタイルでやっていたので、結局24話通しての『輪るピングドラム』は、よくわからないまま終わったなという印象だったんです。だから今回、あらためて全話観返してみたんですが、めちゃくちゃ面白いですね! 「俺、これに出てたのか!」と、ちょっと鼻が高くなりました(笑)。

 

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