女性的なイメージの強いバレエだが、あえて男性にスポットを当てることで、その躍動感をエモーショナルに描いている『ダンス・ダンス・ダンスール』。バレエの動きは極めて優雅だが、それはアスリート並にハードなトレーニングとストイックな生活から生まれており、舞台上はダンサーの体温と舞台照明とでまばゆい熱気に満ちている。そんな世界を“声”で表現するには、どんな難しさがあったのだろう? 『ダンス・ダンス・ダンスール』主演・山下大輝インタビュー最終回。(全3回)
息づかいにキャラクターの性格や感情を込める
――本作はバレエが題材ということで、映像面に大きな注目が集まっていますが、声のお芝居としてもバレエならではのご苦労はありましたか?
今回バレエのシーンは、バレエ団に所属するプロのダンサーが実際に踊ってくださった様子をモーションキャプチャーで撮影して作られているんですが、アフレコではその実写の映像を見ながら収録しました。アニメのアフレコを実写でやることなんてなかなかないので、珍しい経験でしたね。それから、ブレス(呼吸)の音をダンスのシーンでどれくらい入れるかという話もあって、そこはかなり考えましたし、話し合いもしました。キャラクターによって違ってくるところもあると思うし、いろんな可能性を鑑みつつ、アニメーションではどうやるかを考えていきました。
――個人的な印象では、潤平はすごく荒い息づかいで、汗だくで踊っていそうなイメージです。
そうですよね! 潤平は独自のやり方をするじゃないですか。ずっと習っていたジークンドー(格闘技)のクセもあるし、「自分が没頭して気持ちよくなるにはどうしたらいいか」というスタンスからのスタートなので。まだバレエのセオリーを気にせず、息を荒げてもいいキャラクターだと思ったので、ガンガンやらせていただきました。それがどこまで使われてるかはわかりませんが(笑)。そういう意味では、流鶯(るおう/CV.内山昂輝)が一番難しかったと思います。
――内山昂輝さん演じる流鶯は、潤平のライバルですね。バレエの英才教育を受け、むしろバレエしかない世界で育っていて、非常に神経質で繊細。バレエの美しさを体現しているような少年です。
流鶯は幼少期からずっとバレエというものを教え込まれていて、その世界をどれだけ完璧に体現できるかというところですから。アフレコでも一つひとつの所作を丁寧に演じていて、僕は「気が遠くなるような作業をしているな……」と思いましたね。特に5話の洋舞祭りでは流鶯が踊るシーンが多いのですが、そこでの息づかいは潤平より大変だったと思います。バレエダンサーとしてプロフェッショナルでありながら、なおかつ彼の感情も乗せなければいけないし、中学生らしい若々しさも表現しなければいけない。意識しないといけない部分がたくさんあったんじゃないかと思います。
――息づかいひとつにも、お芝居が詰まっているんですね。
そうですね。流鶯は特に、すごいことをやってるなと思いました。
「もしかしたら、いま潤平とリンクしたのかもしれない!」
――一方で、その流鶯を演じていらした内山さんは、「潤平はずっとしゃべっていて大変そう」とおっしゃってましたよ。
潤平は演じていてものすごく楽しい役なんですが、やっぱり疲れる役でもあります(笑)。めちゃめちゃしゃべるし、めちゃめちゃ感情が変わるし、忙しいんですよ。この作品はシーンもガンガン変わっていくんですが、その全部のシーンに潤平はいるので、気持ちの切り替えが大変でしたね。ギャグみたいなシーンも多いので、シリアスなシーンとのギャップをテンポ良く出していくのが、すごく大変だったなって。感情を切り替えないといけないので、体力も使うし、メンタル的にも忙しかったです。たまにちょっと間違えてしまうこともあったりして。
――声優の方でもそういうことがあるんですね!
感情を優先しすぎてしまって、意味合いは合ってるんだけど全然違う言い方をしてしまったりして。でも「あっすみません、間違えちゃいました!」というときでも、その感情で動いていく感じを監督に「生き生きしてる」と言っていただけたので、ありがたかったです。でもこれが潤平の“自分にもわからない感情”みたいなものなのかな、なんて。“冷静じゃいられない、ビリビリ・バチバチしてしまうような感情”って、この感じに似ているのかな、もしかしたらいま潤平とリンクしたのかもしれない! なんて、ちょっと嬉しくなったりもするんです。結果的に間違えているので、録り直すんですけどね(笑)。
――ちなみに、感情が走ってセリフを間違ってしまうというのは、他の作品でもあるんでしょうか。
割と感情が走りがちなタイプなので、ちょこちょこあります(笑)。想い優先でしゃべってしまって、感情をぶつけに行くみたいなことをよくやってしまうんですが、潤平は特に多かったですね。